「かがみよかがみ。この世で一番美しいのはだぁれ?」
「それは女王さま、あなたです!」
白雪姫での有名なフレーズ。子どもの頃、私は「鏡見てるんだから当たり前じゃん」って思っていた。しかし、大人になった私はそうは思わない。
考え方や偏見で、鏡に映る私はキレイにも醜くも映る。
採用基準や本社との折り合いで難航する採用は、まるで人生のよう
店長1名で動いている私は今、アルバイト採用の真っ最中だ。あれもこれもぜーーんぶ1人でするのは、体力的にも精神的にも大変なものがある。
私独自の採用基準は、①ある程度常識がある人、②パソコンが多少できてやる気がある人、③私の雑談をたくさん聞いてくれる人、である。いわゆる、“波長が合う人”だ。雑談しながら楽しく仕事をするのが一番!
アルバイトさんに手厚く仕事を教え、できたらその都度感謝・そして褒める。時には愚痴やくだらないことを話しながら仕事をすると、お客様も「楽しそう」と入ってくる。店舗の業績を上げつつ、アルバイトさんと仲良く、長く続けるコツだ。
私が異動してから、早速応募が来て、5名面接した。私独自の採用基準に見事合格したのは2名。私は早速採用手続きを取ろうとした。
しかし、交通費の条件や年齢制限等の理由で本社と折り合いがつかず、採用できなかった。結局今も私1人で仕事をしている形である。以前2回別の店でアルバイト採用した際はスムーズにいったので、こんなに大変なものかな……と感じていた。
はぁ。私はため息をつく。何だか自分の人生を見ているみたいだ。
かがみよかがみ、私は他の誰でもないけど、別の誰かになれないかしら
私は約30年間の自分の人生を振り返っていた。よほど自分の行いがよくなかったのかな、と思う。その証拠に私には親友と呼べる人はいないし、彼氏も旦那もいない。仕事だって中途半端だ。
たまに鏡を見ながらあざ笑う自分がいる。私なんていてもいなくてもいいじゃん。かがみよかがみ、私は他の誰でもないけど、自分でもないわ、別の誰かになれないかしら?
最近、自分の存在みたいなものを感じられるできごとがあった。断水である。よくわからない理由で、私が住む地域は約1週間断水を強いられた。
「もうすぐ水が出なくなります」と言われてギリギリまで水を貯めていたけど、ある時間から蛇口をひねっても水が出なくなってしまった。
トイレ・洗濯・お風呂といった当たり前のことができない非日常を過ごした。トイレはできるだけ外出先で済ませ、コインランドリーやお風呂やさんに行った。幸いなことに車で5分走らせたら、水が出る地域だった。それが複雑でもあったけど。
そんな日々を過ごしていると、歯医者さんから電話が掛かってきた。「今日こちらに来られる際に、容器持ってきてください。お水入れますので」という内容だった。
院長さんの自宅も水が出なかったのだが、職場は出ている。ものすごく複雑じゃないのかなと思っていた。
災害時、心配し助けてくれる周りの存在に、私が過ごした30年を思う
院長さんは「小学校の給水並ぶやろ?遠慮せんでいいからなぁ~!」と励ましてくれた。歯医者さんだけではなく、母の兄や友人からも水や容器がいらないレトルト食品などが届けられた。水が復旧している今となっては余ってしまっているくらいだ。
ある意味災害のような事態だったから、当たり前なのかもしれない(これを当たり前と思えるのが日本のいい所だけど)。しかし、それだけでなく、LINEには私宛てに「大丈夫?」といった連絡も来ていた。
話を聞いてほしくてたまらない。どれだけ大変か、でも水確保できてるよと報告しているうちに、私の存在って忘れられてないんだな、と思えるようになった。何かあった時に心配してくれる相手がいる、助けてくれる誰かがいる。これが私が過ごした約30年間だ!
まもなく、私は30歳になる。20代後半からずっと30歳になりたかった。20代はまだまだ子ども、30代は完全な大人になれる感じがしたからだ。
でも年齢が来たから大人になれるわけではない。私という人格はそう簡単にはかわらないのだ。だからこそ、また私は問いかける。
かがみよかがみ、ネガティブの向こうでも、前向きな答えをこれからも見つけていこう。
P.S.約1年間エッセイを書き続けさせていただき、ありがとうございました。エッセイを書くきっかけになった峯岸みなみさん、素敵なフィードバックをくださった編集部の皆さま、読んでくださった友人たち、皆さまに感謝です!