あの時、貴方が差し出してくれた手紙を「いらない」なんて言って目を逸らして、本当にごめんなさい。貴方のことだからきっと何時間もかけて、一生懸命に気持ちを乗せてくれて書いてくれたはずなのに。
辛い気持ちは一緒だったはずなのに、あたしはそれを分かろうとする強ささえも持たなかった。

貴方の笑った顔を見てる時間が世界で1番幸せで大好きだった

離れるとしても、貴方がいて幸せだったことを、感謝を、ありったけ伝えればよかった。
大好きだったと笑顔で伝えればよかった。

梅饅頭をおばあちゃんになっても隣で食べて美味しくないって笑って欲しいって言ってくれたことが、あたしが欲しいと言った売り切れたリュックを何日もかけて探してプレゼントしてくれたことが、何よりも嬉しかったと伝えればよかった。
今まで伝えなかった分を忘れるくらいずっとずっとたくさん。

貴方に甘えてばかりで、自分のことでいっぱいになって、弱さをみせるばかりになってたね。貴方もまだ子どもで弱いところも沢山あったはずなのに、受け止めて欲しいってそればかりでいたあたしを許して欲しい。

泣いてばかりのあたしをみて、少しずつ苦しそうになっていく貴方の顔に気づいてたよ。それでも、貴方の幸せより自分の幸せを失いたくなかった幼さを許して欲しい。

貴方の笑った顔を見てる時間が世界で1番幸せだった筈なのに、それなのに、何でなのかな。今となっては分からない。

徐々に態度が冷たくなっていく貴方。最低な奴だと思ってた

あのコンビニの駐車場で話した時を覚えてる?冷たい貴方を無理矢理呼び出して、気持ちを聞いたよね。

「好きだよ」と言った貴方の顔をあたしはずっと忘れない。本当は辛かったでしょ?もっと貴方の手を握って、目をみつめて、貴方の素直な気持ちを聞けば良かった。
徐々に態度が冷たくなっていく貴方をあたしは最低な奴だと思ってた。それが貴方の全てじゃないのに。分かってたはずなのにね。

デートの日は自転車で地元を案内して、自分の幼少期から現在までの話をしてくれたね。お気に入りのどら焼き屋を教えてくれたり、大好きな友達のこともを嬉しそうに語る貴方の隣が好きだったよ。あたしがすること一つ一つを大切にして、何より嬉しそうに受け取ってくれたよね。

インフルエンザになって夜苦しかった時は電話越しでずっと大丈夫だよと言ってくれた。しばらく会えなかった時は、「長い」と一言言って強く抱きしめてくれた。寒くて頬がヒリヒリする日も、それさえも幸せだと思える時間をくれた。貴方といる時間や景色は全部があったかくて優しくて輝いていた。

受け取らなかった貴方からの最後の手紙。何を書いてくれてた?

もっともっと大切にすれば良かった。貴方のために強くなれば良かった。

そんな貴方の最後の手紙をあたしは受け取らなかった。普段泣かない貴方が涙を浮かべながらそっと差し出してくれた手紙だった。
何を書いてくれてた?時々泣きながら、あたしとの時間を大切に綴ってくれたのだろうか。あの時冷たかった理由も、貴方の素直な気持ちも、最後に伝えようとしてくれてたの?

それなのに、あたしは受け取らなかった。受け取らなかったくせに、あたしはまた貴方への手紙を書いている。