私の元彼は、まめな人だった。
私が連絡をすると、ほとんど15分もしないで連絡を返してくれた。彼が趣味で出かけるときも必ず誰とどこで何をするのかを伝えてくれたし、私が出かけるときは帰ってくるまで寝ないで連絡を待ってくれた。

初めてできた彼氏は、人生で初めて私を追いかけてくれた人でもある

最後、私が別れを告げたとき、彼は大粒の涙を流しながら別れを惜しんでくれた。この出来事はまるで3日前かのようにひどく鮮明に残っている。
今では、誠実でまっすぐに愛を注いでくれる彼と、結婚を前提にお付き合いをしている。まめではないし、いつも何をしているか具体的にはわからないし、すぐ寝てしまう。

しかし、私だけを見てくれていることが自然とわかるくらいに愛を注いでくれるし、一途で誠実な人間だと職場の人からも太鼓判を押され、仕事も頑張っている彼に疑う気持ちなど全く起きない。もうすぐ彼と付き合って1年が経つ。

2018年2月、私は24歳にして人生で初めての彼氏ができた。しかも人生で初めて追いかけられる恋だった。今までの私は、恋をしては追いかけて、そして逃げられる恋愛を繰り返してきた。もはやそれがデフォルトになってしまったところはある。

アイドルを追いかけた大学の1年間以外は、必ず誰かに恋をして、アピールしては逃げられ、別の人に恋をしてはアピールして、そして逃げられ……。私のことを好きになってくれる人がいるのか?となんども疑問に思ったけれど、周りに目を向けてこなかった自分の責任でもあるのかもしれないと今では思う。

社会人サークルが同じ彼。「好き」と思える毎日はとても楽しかった

社会人になり、職場の人に恋をするも、言わずもがな。異動するまで同僚は変わらないから、自然に恋はできなくなった。そんなとき、声をかけてくれたのが初彼で元彼。
彼と知り合ったのは、社会人サークル。ソフトテニスが好きだった私は社会人サークルを探して何か所か体験させてもらっていた。ソフトテニスの社会人サークルはほとんど男性しかいないところが多くて戸惑っていたが、結局、高校の後輩の女の子が所属していた彼のサークルに多く体験させてもらっていた。

数少ない女性だったから、サークルの男性たちはとても優しくしてくれたが、その中でも彼は異常なやさしさだった。サークル活動が終われば「無事帰れた?」と連絡をくれたし、けがをした時には一番に飛び出してきて、ケアをしてくれた。そんな彼のやさしさに惹かれるまで時間はかからなかった。

「好きかも?」と気づいたときには、ほぼ毎日電話をしていたし、二人でデートもたくさんした。とくに多かったデートは“ドライブデート”で、二人きりで周りを気にせず話せる一番のデートだった。告白をしてくれたのも、“ドライブデート”だ。お付き合いが始まった。
とても楽しい毎日だったし、私の仕事や特性についても理解してくれて、家族よりも気が許せるような人だった。そんな彼との日々。今でも戻れるのであれば、また過ごしたいと思えるほど居心地が良かった。

急に気になり始めた彼のスマホ。そこにあったのは4人の女性の名前で…

付き合って1年が経つころ、私は、友達が彼氏に浮気された話を聞いた。発覚した理由は出会い系アプリからの通知だったらしい。スマホの中身なんて気にしたことがなかった私は急に彼のスマホが気になり始めた。

彼はSNSが大好きで、スマホを肌身離さず持っていたことに気づく。でも私の仕事が休みの日には必ず会ってくれていたし、電話もしてたから、彼に浮気する暇なんてなかったはずだった。そう信じていたはずなのに、気になってしまったからには止められない好奇心。
ある日、彼がスマホから離れるタイミングを見計らって、彼のスマホの中身を見ることができた。

そこにあったのは4人の女性の名前。目はまん丸になる。彼の元カノと何かで出会った女3人。今でも何で出会ったかはわからない。元カノは家に泊めていたことがあった内容だった。何かで出会った女3人とはちゃんと“ドライブデート”をしていた。
「あ、同じ方法で女を口説いてるなあ……」

楽しさと疑う辛さを天秤にかけたら、疑う日々の辛さが勝ってしまった

1人だったらまだしも、4人の女とおなじ“ドライブデート”をしていた事実に、あきれるような悲しいような、怒りとは違う感情が溢れてきた。
その感情はとどまることを知らず、彼を信じられなくなった私はスマホを見たことからすべてを彼に話し、別れを告げた。

日々の楽しさと疑う辛さを天秤にかけたら、疑う日々の辛さが勝ったのだ。疑う辛さを一生背負い続ける強さは私にはなかった。大好きだった“ドライブデート”は最悪な思い出に変わった。

スマホを見ることがなかったら……、あの日に戻れたら……と思うけれど、戻れないからこそ、今の彼との日々を幸せで、楽しく過ごせているのかもしれない。
わたしはその後悔を二度と繰り返さないように、スマホの世界ではなく、現実の世界に目を向けて、今の彼を大切にしたい。