家族は少ない方が幸せだ。20代後半、結婚という言葉が現実的になるころには、私にとってはそうなのだと、気がついてしまっていた。
理由はいろいろあって、私の家では母と祖母の嫁姑関係が悪くて、いつも言い争っていたのが、両親の離婚により家族から母がいなくなったことで言い争いがなくなったからかもしれないし、一人暮らしをしていた大学時代が一番気楽で楽しかったからかもしれない。

私にとって家族が少ないことは、家の中で気を遣う相手が少ないことで、私は家族が少ないほど家で落ち着いて過ごせるのだと経験的にわかっていた。だから、自ら家族を増やす結婚は、私の幸せから遠ざかる選択なのだとわかっていた。

つらくない結婚をするために、私が「結婚相手に求めていた条件」

そんな私が、結婚をしない人生を選択し、独身を貫いて生きているかというとそうではない。結果的には28歳で結婚した。もし私が都会に生まれ育っていたら、独身のまま生きることを選んだかもしれない。

けれど私の暮らす田舎社会は、結婚するのが当然で、それこそが幸せという雰囲気が、圧力ともとれるように存在する。その圧力に流されるように、私は結婚を視野に入れた。

こんな私が、つらくはない結婚をするには、いくつか条件があった。振り返って洗い出せば、私が結婚相手に求めていたのは4つの条件だった。

1つ目の条件が、家族が多いほど気を遣い、落ち着いて過ごすことができない私と、一緒に過ごしていける人間性があること。どんな人が一緒にいて気疲れせず過ごせるのかわからないけれど、自分にとって家が快適ではなくなる結婚をしたくはなかった。

2つ目の条件は、婿入りをして私の家に住み、私の苗字を名乗ってくれること。これは田舎に特有のことだろうと思う。

私の家は田舎にあって、いわゆる「本家」というやつだ。本家には、誰かが住み続け、苗字を続けていかなければいけない。私には兄がいるが、その役目は兄ではなく私であるという雰囲気が子どもの頃からあった。

現に、兄は県外に就職して家を離れていた。婿入りできるというのは簡単なことではなくて、私の家から通える範囲に勤め先があり、かつ婿入りが許された次男か三男であることが必要だった。

「結婚相手に求めた条件」を1つでも満たす人を見つけるのも大変だった

3つ目の条件は、私がかかっているカウンセラーが挙げた条件だ。私は大学生の頃に精神的な不調を起こし、今でも治療を継続している。

こんな私の病状を理解してくれること。これが3つ目の条件だ。カウンセラーが言うには「心の病の経験者か、精神疾患に関わる仕事をしていたり、そういう勉強をしてきた人ならわかってくれるよ」とのことだった。

4つ目の条件は、性格面で気が合う人がいいというものだ。かつて私の友人は、私のことを「エキセントリック」だと言った。友人は悪い意味で言った訳ではないが、身近な友人にそう言われる程度には、私は変わり者だった。そんな変わり者の私と気が合う人がいい。

私が結婚相手に求めていた4つの条件、「一緒にいて疲れない人」「婿入りできる次男か三男」「心の病に理解のある、心の病の経験者か精神系の仕事または勉強をしてきた人」「エキセントリックな私と気が合う人」は、条件を1つ満たす相手を見つけるだけでも大変だろうと感じていた。

それは、私にとってそれだけ結婚というものが遠い存在であったということだと思う。結婚はしなければならないのだから、条件に妥協はしよう。そうは思っていたものの、予想どおり、条件を1つ満たす人を見つけるのも大変だった。

私が27歳の時「結婚の4つの条件」を満たす人が奇跡的に見つかった

私は婚活パーティやマッチングアプリで婚活をしたが、「一緒にいて疲れない人」の条件が思いのほか大変で、一緒に出掛けるところまで話が進んでも、いざ一緒に出掛けると翌日に響くほどに疲れてしまった。

私が疲れから回復してからまた会おう、そう思っているうちに、相手に気がないものと思われて連絡が途絶えてしまう。そんなことが何度かあった。それだけ私は人と一緒に過ごすことが向いていないのだろうと感じた。

そんな私の婚活は、27歳の時に急展開した。私の結婚の4つの条件を満たす人が奇跡的に見つかったのだ。

彼とは、婚活ではなく、仕事の関係でたまたま知り合った。初めてプライベートで一緒に出掛けたとき、帰ってからの疲れのなさに驚いたことを覚えている。私のなかなかクリアできなかった条件「一緒にいて疲れない人」を彼は初めてクリアした。

付き合い始め、話をするうちに、「婿入りしても問題ないという次男」であること、「大学時代は心理学専攻で、かつ現在は自身も心の不調で精神科にかかっている」ということがわかり、さらに言えば「好きな女性のタイプは遊び心のあるおもしろい人」だという。こうして私は、いないとさえ思っていた4つの条件を満たす人とめぐり会い、その1年後には結婚することとなった。

私の結婚に対する考えにおいて、見込み違いがあったとすれば、「世の中は私の想定よりいろんな人がいる」ということかもしれない。想定外にめぐり会った彼は、私の人生における「家族は少ない方が幸せだ」という考えの唯一の例外となった。