私が恋した相手は自分の生徒だった。
私は大学時代のほとんどの時間を塾講師のアルバイトに捧げてきた。それは、私の家庭が母と妹が障害を持っており(私の家庭は障害がある母と妹がおり)、父は休みやすい仕事をしていたため、自分の学費はもちろん家に生活費を入れなければいけなかったからだ。そのため、サークルなどにも入らず、大学が終わり次第直ぐに塾に行き働く私にとって、生徒とはかけがえのない存在であった。
先生と生徒の関係でも良いからずっと続いてくれたら。心の中で願う
個別指導の塾ということもあり、小学生から高校生まで幅広い学年を持つ私にとって、本当の意味で話が合うというのはやはり年齢の近い高校3年生の生徒であった。
その中でも同じアーティストが好きという生徒がいた。本当に話が合い、友達のように授業中や休み時間一緒に話していた。
その生徒は人見知りであったため、仲の良い私が担当となった。受験生ということもあり、ほぼ毎日その生徒は塾にいた。ほぼ毎日話しているうちに私はその生徒に恋愛対象として惹かれていることに気づいた。
だけれども相手は生徒、私の働いていた塾ではもちろんのこと、生徒との恋愛どころか連絡先の交換も禁止、バレたら解雇であり、私の家の近くにある塾はここ以外学生アルバイトを雇ってくれる場所はない。そのため、この気持ちは心に留めるしかないと自分に言い聞かせていた。
しかし、それでも会えば会うほど、話せば話すほどその子に惹かれてしまう。その笑う時の表情も怒った時の表情、名前を呼ぶ声全てが私の心を掴んで離さない。この関係でも良いからずっと続いて欲しい。そう願っていた。
大好きだったよ…。手紙に書けない想いを何度も心の中で唱えた
しかし、塾という性質上終わりは絶対やってくる。ついにその子の受験が終わり、合格発表の日が来た。塾に来たこの子は満面の笑みで一目散に私の所に来て、
「先生!合格したよ!!先生のおかげだよありがとう!!」
とても嬉しかった。しかしその一方で、もうこの関係は終わりなのだという寂しさが胸に溢れていた、ついに、塾を辞める日が来た。私は、最後に合格祝いといってお菓子と手紙を添えて手渡した。
「合格おめでとう!!毎日頑張ってきたからこそ合格出来たんだよ!
大学生活楽しんでね!!ちゃんと授業はサボらずに行くように!笑 塾は今日で最後だから、最後に私から一言!
たくさんの思い出と楽しい時間をありがとう!」
(大好きだったよ……)
最後の()の中の言葉は心の中でたくさんたくさん唱えたけれども、書くことは出来なかった。心の中で大好きだよということしか出来なかった。
先生と生徒の関係ではなく、同じ学年、同じ学校で出会いたかった。付き合って、もっともっと同じ時間を過ごしたかった。
これは絶対に叶わない私の恋。そっと涙を流しながら私はこの恋にピリオドを打った。