20代の後半は、人生の計画でパンパンに膨らんでいた。
30歳で子どもを産むために、27歳で結婚をして、28歳までに転職をして、29歳まで働いて、育休の権利を得て、30歳で無事に出産。そして33歳までに、2人目を産む。

仕事と結婚、そして子ども。つくづく「女性の分岐点」は早すぎると思う

仕事と、結婚、そして子ども。つくづく女性の分岐点は早すぎるなと思う。
結局、私の結婚は28歳。自分の積み上げてきたキャリアの薄っぺらさに気づき、また、転職してもすぐに育児休暇がとれないからと、キャリアチェンジも諦めた。
それでも私は、子どもを早く産みたいという一心で、タスクをこなすように結婚式の準備を急いだ。

そんな時に、母親から言われた言葉がある。「そんなに焦らないで。大人になったら、計画通りにいかないことの方が多いけど、幸せになれるよ」。心が少し動いたけれど、それでも私は手を止めなかった。
結局、結婚してからの日々は理想の新婚生活とはほど遠く、私が1時間半かけて通勤をし、帰りの早い夫が晩ご飯を作った。帰ったら寝る。
休みの日は、式の準備をする。職場に慣れず、不機嫌になる。部屋が散らかる。遠方の両親はほったらかし。それにコロナが輪をかけて、私のストレスは爆発した。

結婚しても2人穏やかに過ごせたのなら、子どもにこだわる必要はない?

気がつくと、私は泣いていた。夫がゆっくりと話を聞いてくれて、次の日もなんとか仕事に行って、またしばらくして涙が出た。
もはやなぜ泣いているのかは、よくわからなかった。そうこうしているうちに、激動の毎日が嵐のように過ぎ、私はもうすぐ、30歳を迎えようとしている。
当初の「予定」はことごとく崩れ、今は真っ当に暮らしていくことに精一杯の日々だ。だけど、その精一杯の暮らしの中には夫というかけがえなのない存在がいて、ささやかな幸せに感謝することもできている。

そして、驚くべき心境の変化もあった。私たちは「子どもを持たない」ということを、1つのリアルな選択肢として捉えるようになっていたのである。
それを聞いた友人が、「それってDINKsだよね」と言った。私は、その言葉を知らなかった。
ただ、2人で穏やかに過ごせたのなら、お互いの夢や目標を尊重し合えたのなら、私たちは、それも幸せだと考えただけなのである。

30を迎えようとしている今、「未来を憂いすぎなくていい」と思える

結婚を取り巻く言葉に、これまでどれだけ振り回されてきただろう。私が嫌いな「不倫」や「忍耐」という言葉、結婚してから向き合ってきた「キャリア」や「お金」、そして「子ども」という言葉。それら全てが結婚であるとも言えるし、どれも当てはまらないとも言える。
だけど今は、自分が歩んだ先に、言葉が現れることがあるということも知っている。

母親のなにげない一言を思い出した。それを自分のものとして語るにはまだ早いけれど、未来を憂いすぎなくていいんだと今は思える。
結局、私にとっての「結婚」は、パートナーと歩んでいるというたった1つの事実だけだ。横にいる彼を見て、結婚して良かったと、私は思う。
何十年後もそう言えているかはわからないけれど、今はきっと、それでいい。