大学1年生の冬、生まれて初めて彼氏ができた。
今どこで何をしているのかはもうわからないけど、毎年クリスマスの時期が来ると、頭の片隅にある記憶に少しだけ色がつく。
大学入学当初から気になる存在の彼。あっという間に恋は芽生えた
彼とは同じ学部だった。
入学前から同期のLINEグループができていて、宿舎の入居とともに顔を合わせた男子たちの写真や、Twitter情報など、入学式直前は特に期待に胸を膨らませた学生たちのメッセージが飛び交っていた。
好きなキャラクターが一緒だったことで、当時からお互いを認識して気になる存在だった私たちは、同じサークルに入った。
毎日のように講義で顔を合わせ、チャイムと同時に「じゃあまたサークルで!」と手を振る瞬間は、私にとって小さなしあわせだった。
あっという間に仲は深まり、ついにキャラクターにゆかりある場所へ行くことを口実に二人でデートすることになった。
天皇誕生日で当時は祝日休みだった12月23日、キャラクターの聖地を堪能した後、すぐそのまま帰るのももったいないからと、帰り道に近い遊園地に行った。
乗り物に乗ったり、お化け屋敷に入ったり、イルミネーションを見て回ったり、時間を忘れて楽しんだ。正直こんなデートらしいデートをしていて何も起こらなかったのが今思えば不思議だ。
クリスマス一色の遊園地を散歩しながらケーキの話をしているうちに、私がお菓子作りが得意だったことから、翌日のクリスマスイブにケーキをつくってあげることになった。
イブの夜に「クリスマスだから言うわけじゃないけど」と切り出した彼
その日もサークルの活動があったので、ケーキは講義が終わってから即行でつくった。
彼が大好きだというミルクレープに2人が好きなキャラクターを描いた。
サークル終了後、周りに気づかれないように私の自宅付近まで一緒に帰った。彼に外で待っててもらい、はやる鼓動を駆け足で加速させながら部屋にケーキを取りに行った。
よかったら食べてねとケーキを渡すと、彼は笑顔で「なんでケーキ作ってくれたん?」と言った。
私は思わぬ先制攻撃に面を食らった。息をしているはずなのに息ができてない感覚。
「ずるい、ずるいよ……」
とても目を合わせられる状況ではなく、私は下を向いたまま、返事をした。
空白の時間が少しだけ流れて、私が駐車場の砂利を踏みしめていると、彼が口を開いた。
「クリスマスだから言うわけじゃないけど」と切り出し、また少し時間が流れると、「好きだから付き合ってほしい」と告白した。
ずっと待ってた、自分からはできなかった告白が、まさかクリスマスイブに訪れるとは。
「よろしくお願いします」と伝えると、彼は笑顔で自転車に乗り、彼の家へと帰っていった。
見えなくなるまで見送ったあと、私はまた駆け足で自分の部屋に戻った。
ベットにダイブし、携帯を取り出して、仲良し友達のグループLINEに連絡をする。
すぐに鳴り響いたたくさんの通知音を浴びながら、余韻に浸った。
誰かに必要とされることは、時に例外もあるが嬉しいことのほうが多い。
そして、自分が必要としている相手から必要とされることは、この上なくしあわせな気持ちになる。
戻りたいとは思わないけど、いとおしい純粋な恋だった
今の自分がしあわせな日々を送っているから戻りたいとは思わないけど、彼と付き合った頃はほんとうに純粋な恋をしていたと思う。
移りゆく季節、目に映る景色、ちょっとしたコンビニへの買い物、自分と対峙する全てのモノやコトがきらきらしていた。
クリスマスもとてもきらきらしていた。それまでは子どもの頃のイメージのまま、子どものためのイベントだと思っていた。
結婚した今も、クリスマスがくるとわくわくした気持ちになるが、あの頃とは違い明るくてあったかい世界を少し一歩引いたところから、眺めている。
順調に歳をとっている証拠だろうか?それがまたいとおしい。