「サンタクロースになります」

小さいころから人が喜んでくれることを考えるのが好きだった。
小学生のころは自らご近所の人たちに「300円でサンタクロースになります」とお手紙を書き、依頼を募集した。
集まったそのお金で材料を買い、ガトーショコラやチーズケーキ、クッキーなどのお菓子を作り、クリスマスイブの日にサンタの恰好をしておうちに配り歩いた。
事前に親御さんから預かったプレゼントも渡すと、小さい子どもたちはとても喜んでくれて、頭を撫でると自分までとてもうれしい気持ちになった。
家の近くにはたくさんのオリーブやラベンダーが植えられていて、お花が身の周りにあるのが自然だった。そのせいか、お小遣いがたまるとお花を買いに行くのが習慣になった。
近所のお花屋さんはとてもやさしく、かきあつめた500円でもかわいらしいブーケに変身した。
お花をもって歩いている自分が誇らしく、良い香りのする花びらを撫でると
クリスマスに小さい子どもたちの頭を撫でたときのようにくすぐったそうにしている姿を思い出して、また幸せな気持ちになった。

仲直りの印に、花を送り合った

高校生の時に留学の機会をもらった。日本にはないたくさんの自然や花に触れ、色を見て、音を聴いた。
移民が多いその国では、紛争があった地域から来た子や、もともとその国で生まれた子が同じ学校で学んでいた。宗教や文化の違いで時々長い話し合いになることはあったけれど、仲直りの印にと小さなブーケを送り合っていた。
違う国でもお花をもらうことで幸せになるのは、国籍は関係なく嬉しく感じる。
それはサンタさんからプレゼントをもらうときのようにわくわくするんだな、と気付いた。

留学先では実際にサンタさんの村へ行った。
初めて訪れるサンタさんの村はとても寒く、一面真っ白で、音がなかった。
実際にサンタさんに会う時はお花を持っていきたかったけれど、寒い地域には花屋さんもなくサンタさんに「お花を持ってきたかったんです」とお話した。
その時にサンタさんは「この国には”雪”に関するたくさんの言葉がある。お花のような雪という言葉もあるんだ。雪はお花のように見えるからね」と教えてくれた。
夜は雪原に寝ころびながら夜空を見上げた。オーロラも星空もきらきらと光って、まるで海の中にいるような不思議な気分がした。
とても寒いはずなのに、サンタさんの言葉もあってかとても温かい気持ちになった。

花のように、私は生きられているだろうか

日本にいると、
春になればふわふわの生クリームのような桜の色が見られ、
藤のお花が優しい香りをだし、薔薇が様々な色で目も幸せにしてくれ、
アジサイが雨の音とともにやってきて、金木犀のとろりとした香りが秋を知らせてくれる。
ドライにしたイチョウの葉やラベンダーは身体の内側からも温めてくれる。
お花はいつもただそこにまっすぐと佇んで私に問いかけてくる、「しあわせ?」
そんな大人になれているだろうか。
まっすぐ立ち、ただそばにいることができる。
隣にいると温かく感じられる、そんな人間になれているだろうか。
誰かの心を温めてあげられる人にどうか、なることができていますように。

そう願いながら私はお花に話しかける、「明日も良い日でありますように」。
そんな私を家族は「はなちゃん」と呼んでくれる。