実家からわざわざ出ていく理由など、思いつかなかった
私に旅が必要な理由。それは、帰る場所があることの安心感の享受と自分時間の徹底的な確保、この2つに限る。
そして、私が特に必要とするのは、誰かと行く旅行よりも、ひとり旅であるので、ここでは私がひとり旅を必要とする理由に絞って語ることにする。
(勘違いされたくないので一応言っておくと、誰かと行く旅も私は大好きで常にひとり旅がしたいという訳ではない。しかしどちらが必要かと言われたらそれはひとり旅だ、というそれだけの話なのだ)
生まれてこれまで一度も実家を出たことがない私は、あまり一人暮らしをしたいと思ったことがない。親に生活に関して強く縛られたこともなく、それなりに仲も良いためか、自分で何もしなくてもご飯が出てきて掃除もしてくれる家からわざわざ出ていく理由など思いつかなかったのだ。
待ってくれているから行く決意も湧くし、帰ろうと思う
しかし、周りには一人暮らしをしている人も少なくない歳になった。さすがに色々な面(特にお金)で親に頼りすぎることに申し訳なさを感じずにはいられない。
自立しなければ……。そんな思いばかりが先立つが、いきなり一人暮らしをする勇気も財力も持ち合わせてはいない。
そこでひとり旅の出番だ。トラブルへの対応も一人でこなさなくてはならないし、寂しくなっても隣に知り合いはいない。一人暮らしへのプチプチ予行演習だ。
これまでに京都、福岡、函館などにフラフラひとり旅に行ったが、自立するという決意ももちろん大きくなるが、それよりも何よりも自分の帰りを待ってくれている人がいることの安心感を感じることの方が多かった。
待ってくれているから行く決意も湧くし、待ってくれているから帰ろうと思う。そう思えることが当たり前のようで当たり前でないことに、ひとり旅に出ないと気づけない。
そしていつの間にか、待っている人がいる安心感のトリコになっている自分がいた。この沼から抜け出せない以上は、私は旅を続けるだろう。
ひとり旅では、自分のために自分のしたいことができる
また、ひとり旅は自分時間を確保する、最強の手段でもある。
普段の生活でも自分時間は確保できる。しかし、その自分時間を何かに追われているかのように感じ、有意に使えないこともある。自分のために好きなことをしてもいいはずなのに、やらなければならない課題や仕事が先にあるというだけで、好きなことをやる後ろめたさを感じてしまう。
変に真面目な性格だと、こういう余計な感情を抱くことになるから厄介だ。
でも、ひとり旅はこの後ろめたさを感じずに過ごすことができる。パソコンも課題も何も持っていかなければそもそも取り組むことが出来ないので、自分のために自分のしたいことができる。
私は主にひとり旅の移動時間で、本を読む時間を大切にしている。飛行機や新幹線の中でひたすら活字を頭に流し込み、旅行期間中に読了する心地良さは自分にしか分からないものなのではと思ってしまう。それくらいこの時間はとてつもなく濃いものになっていると感じられるのだ。
趣味は旅行、と答えるとありきたりな回答な気がして、あまり好きではなかった。けれど私にとって旅行は趣味という一言で片付けられるようなものではなく、必要なものだったんだと気付くことができて、なんだか少し胸が軽くなった気がした。