旅と旅行の違いはなんだろう。
私のなかでは、日程を細かく決めスケジュールの中で動くのが旅行、気分によって行く場所を決めるような、より自由なものが旅。そんな認識がある。
旅と呼んでいいか分からない話をする。

遠距離恋愛の彼。1日半を過ごす為に、往復7時間バスに揺られていた

私は学生時代から付き合った彼氏と遠距離恋愛を経て結婚した。
恋愛至上主義で、寂しがりな私は遠距離恋愛にとてつもない不安を持っていた。対して相手はマイペースでおっとり。距離なんて何てことない、大丈夫というタイプだった。

お互いに奨学金の返済もあって、社会人なりたての頃はお金もなく新幹線は滅多に使えない。でも月1じゃ寂しい。
だから、1日に1往復しか出ていない、ゴールデンウィークでも3分の1ほどしか利用者がいない高速バスを使って会いに行っていた。片道3時間半、始発で最寄り駅を出て昼近くに着き、次の日の夕方には帰る。
1日半過ごす為だけに、往復7時間バスに揺られていた。今ではよくやっていたな……と思うけど、その7時間が私にとっては色んな思いを巡らせられる時間であり、旅であった。

行きはコンビニのホットコーヒーを片手に、お気に入りの音楽を聴きながらわくわくしてバスに揺られた。帰りは別れの寂しさを感じなから、遠距離恋愛の曲を聴いたりしてぼーっと過ごし、LINEで彼氏とやり取りをする。
行きと帰りでは景色の見え方もまったく違っていた。

彼に会うために仕事を頑張れた。バスに揺られる時間も大切だった

最初こそ、別れ際には涙を流してしまったこともある。でも困らせるだけで、周りの目もあるので軽く肩を叩いて別れるようになった。
帰りが夜ということもあって、今思い出しても寂しかったな~という印象が強い。でも、辛いと思ったことはなかった。
3時間半、バスに揺られてうたた寝をしたり、ただぼーっと音楽を聴いてる時間が私にとってなくてはならないものだった。

その頃私は新卒で入った会社で、希望とは異なる仕事をしていた。毎日朝から晩まで忙しく、休日出勤がある時も。手当ては貰えたが、ただ仕事をしてお金を稼いでる感が拭えずにいた。そんな時、彼氏に会いに行く予定があるというだけで仕事を頑張れた。
「そんなに時間かけてよく行くね~」と周りには言われたが、彼氏に会いたいということもそうだが、その3時間半は余計なことも考えず車窓を見ながら自由に過ごす、大切な時間だったのだと思う。

子育てに追われている今。ゆっくりと彼と一緒に旅に出る日を夢見て

今はその彼と結婚し、子育てに追われている。自分の時間はあまりないので、尚更あのときの3時間半が贅沢な時間に思えてくる。
夫との関係も、子供が産まれてからはお父さん・お母さんになっていってるのを感じる。あのときバス停でお互いを笑顔で迎えた二人ではないけど、子供の成長を笑って共有できるのは近くにいる彼だ。

当時使っていた高速バスは、利用者がいなくて廃線になってしまったと聞いた。今はコロナ禍で、遠距離カップルにも辛い時代だろうなと思う。早く、行きたいところに自由に行ける時代になりますように。

そして子育てが落ち着いたら、旦那とまた二人で行ったことがない場所の各駅停車の旅にでも出たい。時間をゆったり感じて、好きな場所に行き美味しいものを食べたい。
その日を夢見て、毎日子育て頑張ります!