ハロウィンが終わるとすぐ、街の装飾はクリスマスモードになる。時としてまだそんなに寒くないのに、雰囲気だけで冬を感じさせられる。

毎年この時期に耳にする曲はいくつもあるが、私のお気に入りはマライア・キャリーとWham!。どちらもちょっと切ない歌なのにクリスマスの代表曲として長く親しまれているのは、幸せな気持ちよりもそんな気持ちの方がこの季節に似合うからだろうな、と私は思う。
先述の2曲のうち、後者でいつも高校2年生のクリスマスを思い出す。これまでで最も理想に近い過ごし方だったのに、これまでで1番ひどい恋愛になった。

急に縮まった相手との距離。告白も受け入れることに…

その年の11月に、好きな人に告白して振られた。そんな気持ちで歩くきらびやかな街並みに、何度も泣きたくなった。

そんなやさぐれかけた気持ちのときに急に距離が縮まった、去年のクラスメイトとイルミネーションを見に行った。お互いに彼氏彼女がおらず、部活のメンバーでイルミネーションとか行かないの?みたいな話の流れからだった。

彼とは同じクラスだったとき、あんまり話したことがなかった。それでも行きの電車では、話がはずみすぎて乗り換えの駅に気づかず乗り過ごしてしまった。逆方向の電車に乗り換えながら、こんなのも楽しいなと思っている私がいた。そして、壮大なイルミネーションも楽しんだ。

それから1週間後。大晦日に、彼は私に告白してくれた。
「クリスマスの時に言おうとして言えなかった。俺、君のこと好きなのかもしれないって思った。俺でよければ、つきあってくれませんか?」

断る理由なんかない。喜んで受け入れた。
まだ好きという気持ちは追いついていなかったけど、久しぶりに彼氏ができて心が踊った。

初デート前に迎えた突然の別れ。理由も教えてもらえず、突き放された

年末年始の休みを挟み、迎えた新学期。クラスが違ったから教室で顔を合わせることはなかったけど、家の方面が一緒だったから3号車の3番ドアで待ち合わせてたまに一緒に登校した。

彼の部活が終わる時間が遅く、家も遠いからなかなか直接話す機会は取れなかった。それでも毎晩LINEしてとてもウキウキしていた。突然下の名前で呼ばれてきゅんとしたりもした。

ああ、私も彼のこと好きなんだ。と気づいたのは付き合って1ヶ月が経つころ。今度の土曜日、部活が終わったら遊びに行こうと約束していた。それが付き合って初めてのデートになるはずだった。

しかし、その日は出かける代わりに突然別れを告げられた。戸惑う私に彼はひたすら謝ったけど、理由は教えてくれなかった。

あの曲を聴くと思い出す。勝手な都合に巻き込まれた私の気持ちは?

納得がいかなかった私は、彼に詰め寄った。付き合ってやっぱり違うと思ったとか、飽きたとか、せめて理由が欲しいと言った。

いろいろ状況を説明されたけど、つまるところ彼の答えはこうだった。
他に好きな人がいたけど報われなくて、他の人を好きになろうとしてみたけどやっぱりそれは違うと思った、ということらしい。

私としてはすごく不服だった。一緒にいて楽しかったのは確かな事実だけど、別にこちらから好きになって付き合ってくれと頼んだわけではない。それで少し一緒にいて、気持ちができてきたころに突然突き放されるなんて。
振り回された気持ちが追いつかなかった。好きになろうとしたって、それで相手も巻き込んだならちゃんと責任取ってよと心から思った。

そんな相手だけど、しばらく好きでいたし、やっぱり一度は付き合った相手。卒業式では一緒に写真を撮ってほしいと言った。

それから5年経ち、共通の友人が同席の上でだけど一度会った。当時のことを散々に言い、言われた。お腹が痛くなるほど笑えたのでそれも悪くなかった。お前がどんな人と結婚するのか気になるって言われたのだけは、あんたに気にかけられる筋合いはないわ、なんて思ったけど。

今でもあの曲を聞くと、乗り過ごした電車と素敵なイルミネーションと、その時隣にいた相手のことを少しだけ思い出す。