一人暮らしをする前の人にとって、一人暮らしって憧れだと思う。
どんな間取りのお部屋に住みたいとか、どんな食器を使いたいとか、いろいろ考えてそのための雑貨をこっそり買ってみたり、賃貸住宅の間取りを見てみたりして。もっと凝り出すとインテリアのテイストを調べてそれに合わせた家具や食器、家電を探し出したりして、それが何よりも楽しくなってしまう。

初めての一人暮らしは、おしゃれとはほど遠い、ごった煮みたいな部屋

でも、いざ一人暮らしを始めるとなると、そんなにお金もないし、時間もないからインテリアとか気にしている暇もなかった。家にあった余ってる食器を段ボールに詰めていたから可愛い食器ではなく、貰い物のマグカップ(某アニメのキャラクターのカップや、どこにでもあるようなドット模様のカップ)なんかが初めての一人暮らしでの食器になった。
だから、私の場合は、家具や家電を置いてやっと一息つける部屋になって見渡すと、おしゃれとはほど遠い、ごった煮みたいな部屋になっていた。それから10年近く続けた一人暮らし生活を暮らしていく中で、少しずつ時間をかけて、お気に入りの家具家電を選び取り、自分好みの部屋に創り変えていった。

初めて住んだ一人暮らしの住まいはいわゆる学生用アパートで、どこにでもあるような1Kの部屋だった。その部屋は案内をしてくれたタクシーの運転手さんが偶然紹介してくれたところで、部屋を見てなんとなく気に入って選んだところだった。

お世辞にも快適とは言えないアパートだけど、一人になれる場所

玄関が北側にあって中に入ると目の前に廊下があった。その廊下沿いにガスコンロと流し台の付いたシステムキッチンがあって、システムキッチンの反対側に小さいユニットバスとトイレがあった。居室と廊下は引き戸で仕切られていて、冬場はこの引き戸を閉めておかないと玄関から伝わる冷気を遮れなかった。
居室は7畳のこじんまりとした部屋で南向きで、大きな窓が南側の全面にあるとても明るい部屋だった。晴れた日の朝にカーテンを開けると夏はジリジリと暑さが飛び交い、冬はぽかぽか陽気を呼び込んだ。水色の遮光カーテンを開けて朝日を浴びるのがとても好きだった。
学生用アパートに住んでいると良くあるのだけど、たまに隣の住人が宅飲みをしていて夜中にうるさくされたこともあったし、反対に私も友達を家に呼んでその狭い部屋で時間も忘れてガールズトークをしたこともあった。実家暮らしの時はできなかった恋人を部屋へ招いたこともあった。騒がしいのもお互い様で近所付き合いとかもなかったけれど、それがなんだか心地よかった。
築年数は20年を超えていたし、収納スペースもほとんどなく、狭くてお世辞にも快適とは言えないアパートだったけれど、バイトで疲れた日も友達と真夜中まで飲み歩いて帰った日も、課題やテスト勉強をして徹夜した日も、どんな時もその家に帰って、ベッドに潜り込んでぐっすり眠った。
恋人の家のベッドで寝たこともあったし、友達の家のソファで寝たこともあったけれど、次の日にはちゃんと自分の家に帰っていたし、一人になれるあの場所が私には必要だった。

全て思い通りにできる自由も、それに伴う責任も、一人暮らしの良さ

一人暮らしは自由だと思う。すべて自分の思うようにできる。
どんなに部屋を汚しても怒られないし、真夜中にフライドチキンとポテチを食べながらハイボールを飲んでも、寝起きにチョコレートとナッツがトッピングされたアイスクリームを食べながらビールを飲んでも誰にも咎められない(朝からお酒飲むなんて、講義やバイトのない日に限るけれど……)。
一日中、レンタルショップで借りた映画を観ていても、ベッドに寝転んで本や漫画を読んでも、すべて許される。
そのかわり、それらの後始末は自分でしなければいけない。太っても、気持ち悪くなっても、その責任も負わなければいけない。自由はいいけど、責任を負いたくないという考えもあるけれど、責任を負えば思う通りに生活できるともいうし、それが一人暮らしの良さなのだと思う。
「一人暮らしになったらしたいことリスト」をたくさん書き溜めて、それを1つずつクリアしていくのはとても楽しい。もちろん、したいことをしたら後片付けもする必要が出てくるかもしれないし、夜中のアイスクリームなんて太るの覚悟ですることになると思う。
けれど、たとえ太ったとしても、それも一人暮らしならではだと思うし、いつか思い返してニヤリと笑える思い出になる気がするから、一人暮らしじゃないとできないこと、一人暮らしをしたらやりたいことはどんどん実行して、やっぱり一人暮らししてよかったって私は思いたいな。
だからそれらの思い出はとても大切にしまっている。一人暮らしバンザイ。