小学生の頃から一人暮らしに憧れていた。
何に影響されたのかは全く覚えていないが、たぶん家族で観ていたドラマか、少女漫画を読むのが好きだったのでその中のシーンがきっかけだったのかな、と思う。
6年生くらいの頃から「大人になったら絶対一人暮らしする!」と親に宣言していた。
一人暮らしに憧れた理由は「自分の好きなように時間を過ごせるから」。
家族が嫌いとかそういうのではない。
私は昔から何事も、やる気を起こすまでに時間がかかるが、やり始めるとすごく集中してしまう。

狭い一部屋でも、自分だけの世界。一人暮らしの妄想が広がっていく

学校の宿題、部屋の片付け、プリクラ帳をデコる作業なんかも、一度始めると途中ではやめたくないタイプだ。
2階の自分の部屋にこもってこれらの事をしていると、階段の下からお母さんが「ごはんだよー」と呼んでくる。
「今はご飯食べるよりやりたいことがあるんだけどなあ……」としぶしぶ下の階へ行った。
入浴が好きな私はついつい長風呂をして、次に入る家族から「まだー?」と言われることがよくあった。
「一人暮らしだったら思う存分、好きなだけお風呂に入っていられるのになー」といつも思っていた。

中学生、高校生と大人に近づくほど、憧れの一人暮らしの妄想が広がっていった。
玄関の靴棚に入っているのは自分の靴だけ!
部屋の床は白っぽい木のフローリングがいいなあ。実家が黒系だから。
カーテンの柄も自分の好みでいいんだよな~。
小さくていいからカーペットはモフモフなのがいいな。
テーブルも小さくていいけど色は濃いめのピンクがいい!
自分のしたいことが満足するまで出来る。
ご飯食べるのはそのあとだっていい。
遅い時間になったって誰にも何も言われない。
お風呂に入りたいと思ったら準備して、いつでも一番風呂!
どれだけ長く入ってたって怒られない。
入浴しながら携帯いじるの憧れる!
狭い一部屋でも、自分だけの世界。
考えれば考えるほど一人暮らしが楽しみになって、憧れも増した。

仕事にも慣れ、一人暮らしへの憧れが強くなり両親に相談

高校3年、先生が卒業後の進路の話をし始めた頃、私はその時のバイト先から「卒業したらそのまま正社員として働かないか」と声をかけてもらい、就職という道へ進んだ。
バイトから正社員になるという不安はあったものの、特にやりたいこともなかったし進学するつもりもなかったから、進路に悩まずに済んで良かったと思った。
両親も「こんないい話ないよ」ととても喜んでくれた。

正社員として働くことに慣れ始めた頃、親に「一人暮らしはいつから始めていいの?」と聞いてみた。
通勤は電車なのだが乗り換えが2回必要だった。
本数も多くはなく、一本逃すと次に来るのは30分後。
ホームのベンチに座って「この30分を睡眠時間にあてたい……」とよく考えていた。
私が一人暮らしをしたい理由に「職場の近くに住みたい」が加わっていた。
「20歳になるまでは家にいてほしい」とお母さんが言った。
そもそもお母さんは一人暮らしの経験がなく、私が家を出ることにあまり賛成していなかった。
寂しいという気持ちももちろんあったと思うが、心配が大きかったと思う。

20歳になったらできる一人暮らしに向けて、100万円貯金を開始

一方、お父さんは実家から離れた大学に通うため高校卒業後から一人暮らしをした経験があった。
「全部を自分でしなくてはならない大変さも知れていいと思う」と賛成してくれていた。
20歳になったらという制限はされたものの、反対されているわけではないし、と私も納得した。
思い描いた一人暮らしのために、実家で暮らしている間に貯金を頑張ることを決めた。

当時19歳。友達で一人暮らしを考えている子はいなかった。
ネットなどでも特に情報収集はしていなかったので、どれくらいお金があれば一人暮らしが始められるのかわからなかった。
なのでとりあえず100万円貯金することを目標にした。
引っ越しの費用、部屋を借りる際にかかる費用はもちろん、家具や電化製品、食器などは自分好みの物で揃えたかった。
ありがたいことに実家暮らしは生活費がかからない。
出費をあまりしなかったこともあり、私は1年で目標額の100万を貯金することができた。

ずっと憧れだった一人暮らしを有言実行できた自分が、自慢の私

20歳になった年、私は秋から一人暮らしを始めた。
床は白っぽい木のフローリング。
その上には触り心地のいいカーペット。
カーテンは大好きなハローキティの柄にした。
部屋の真ん中には濃いピンク色のテーブル。
水道代とガス代を節約するため入浴は毎日ではないが、仕事で特に疲れた日は満足いくまで長風呂をする。
自分へのご褒美だ。

両親にはこまめに連絡するようにしている。
娘が20歳で家を出て一人暮らし。
ご飯作りも洗濯も、実家で暮らしている時は全くしていなかったから心配だらけだと思う。
ワガママな私を送り出してくれて、応援してくれて、感謝している。

と同時に、ずっと憧れだった一人暮らし。
妄想していた理想の自分の部屋。
有言実行できた自分が、自慢の私です。