いつかは一人で暮らしたいなー。
10代の私は、漠然とそんなふうに思っていた。まだ高校生、人生の何も分からなかった頃。
大人になればみんな一人暮らしをして、素敵に自炊をして、彼氏を呼んでみたりするものだと思っていた。高校生らしく、ピュアで希望ある発想をしていた。
高校生なので、親がうるさいとか面倒だとか、いっちょ前に反抗心があったこともある。家を出て行けば、もう親にあれこれ言われずに済むと思っていた。

就職し、実家という平和な塀から自立したい夢と、待っていた現実

しかし、受かった大学は家の近くだったので、進学しても私はそのまま実家から通い続けた。
周囲にもちらほらと一人暮らしの子を見かけるようになった。
「今一人暮らし?すごいねー」
「実家のほうがいいってー、毎日カップ麺ばっかりだよ」
「実家はどこにあるの?」
始めは新鮮で物珍しかったが、そんな会話も当たり前になっていった。
自立して、自由に生活している(ように見える)子たちが、私にとっては輝いて見えた。
私もいつか就職したら、この平和な塀を出て行って、みんなと同じように自立しよう。そこから、自分の人生が始まるんだ。
だけど、現実はそう甘くなかった。

私は看護系の学生なので、看護実習があった。
これがまあ本当にきつくて、とても私に耐えられるものではなかった。
心身共にボロボロになり、満身創痍で涙目のまま家に帰ってくる日が続いた。満足に睡眠も食事もとれないので、かなり限界状態だった。
それでも家に帰れば、温かい夜ご飯が用意されていて、笑顔の家族が出迎えてくれた。お風呂が沸いていて、ベッドに羽毛布団がかけられていた。ありがたすぎる。こんなに嬉しいことはないと思った。家族がいなかったら、暗い廊下で倒れてそのまま寝てしまうだろう。
私は、家族のありがたみを感じると同時に、「一人暮らしはまだ無理だ」と悟った。仕事しても同じ状況になるなら、こんなのを何年も続けるのは無理だと思った。ピュアなあこがれの気持ちは、現実に直面して儚く散っていった。

向き不向きだってある。良し悪しは外野が決めることじゃない

世の中には、一人暮らしが偉いとか、自立していると見なす風潮が、少なからずあるように思う。私もそう思っていたことがある。
でも今では、どちらでも自分が好きなようにしたらいいのではないかと思う。
一人暮らしが向いていない人だっているだろうし、逆に実家がストレスな人もいるだろう。
就職などで一人暮らしを選ばざるを得ない人もいれば、初めから地元で就職する人もいると思う。それぞれに適性や家庭の事情があるのだから、どちらがいいとか悪いとかは、外野が決めることではないのだと思うようになった。
最近は移動住宅やホテル暮らしなども認知されてきているし、海外ではルームシェアが一般的な地域もある。どんな暮らしの形だって尊重されるべきなのだと思う。

私はまだ実家にお世話になるつもりだけど、やっぱりいつかは、家を支える立場になりたい。
支えてくれた家族へ、いつか恩返しができますように。まだまだ未熟な私だけど、焦らずに成長を重ねていきたいと思う。