夢にまで見た、彼氏と過ごすクリスマス。
彼氏いない歴イコールほぼ年齢の私に、突如、舞い降りたビックチャンス。
一年に一度の、恋人たちの季節に運良く巡り合わせた以上、断じてただでは過ごすまい。

理想のデートプランを練る、愛おしい時間

晴れてのクリぼっち卒業に浮かれた私は、それはもう有頂天になって、何年も何年も温めてきた理想のデートプランをこれでもかと練り上げていった。
まず、12月24日のクリスマスイブは、ディズニーランドデート。時間が惜しいから、早朝から待ち合わせして、閉園ぎりぎりまで遊びつくす。そのまま都内のホテルに一泊して、翌日は、日比谷の映画館で「アナと雪の女王2」を鑑賞。

その足で午後は、女子なら誰もが憧れる、星野リゾート軽井沢へ。映えるイルミネーションの下で、写真を撮りまくること必須。カフェや雑貨店をまわって、クリスマスディナーを堪能したあとは、教会の音楽礼拝で祈りをささげ、クリスマスレターを贈り合う。
“聖なる夜”は、贅沢にコテージ型の4つ星ホテルに宿泊すれば、互いの愛も深まること間違いなし。

宿泊予約もばっちり押さえたところで、あとは当日を待つのみ。
クリスマスプレゼントには、定番のマフラーを購入して、前日仕込みも漏れなく完了。
人生最高の瞬間を今か今かとカウントダウンする時間は、格別に愛おしかった。

待ちに待った当日。彼からのプレゼントは…

そして迎えた、24日の朝。舞浜駅までの電車には、同じく彼氏または彼女と落ち合う予定の若者でいっぱい。手にはクリスマスプレゼントらしきものが入った紙袋や、花束を携えた人もちらほら。私には、どんなプレゼントが待っているのだろう。期待に胸がはちきれそうになりながら、改札を通る。

ところが、待ち合わせ場所に彼氏の姿は見当たらない。LINEを見ると、「ちょっと遅れる」との連絡が。ちーん。彼女を待たせるとは私の辞書にないのだが、まあ仕方ない。
ほどなくして現れた彼氏は、少し眠たげなご様子。若干気落ちするも、一緒に過ごせばそのうち元気になるだろうと言い聞かせて、パークへ入園。

ビックサンダーマウンテンの列に並びながら、早速、プレゼントのマフラーをサプライズプレゼント。彼氏は驚きながらも、素直に喜んでいた。
よーし。次は私が贈られる番だ。バックからそれらしきものを取り出す素振りを期待するが、いつまでたっても何も出てこない。あれれ。

さり気なく、「あのー、私には、ない感じ?」と聞いてみると、「うん、ない」と、彼氏即答。「はっ!?」思わず声が漏れて、周囲の視線をさらってしまう。
ちょっと、これはかなりショックなんですが……。
クリスマスにデートしてるのに、プレゼントがないって、どどどゆこと?
一瞬、混乱と動揺に駆られるも、ああそうか、これももしかしたらサプライズのうちなのかもしれないと、勝手に早合点。

1日の終わりに待つビックサプライズを期待しながら、気を取り直してディズニーを満喫。
クリスマスのパレードを拝みつつ、3大マウンテンも制覇して、ちょっと疲れたところでカントリーベアシアターで一休み。幸せ気分で隣を見やると、彼氏ちゃっかり、うたた寝中。おい。

ツッコミどころ満載だけど、なんだかんだ2人でいると楽しいことは間違いない。
あっという間に閉園時間が近づく中、都内に宿泊する私たちは気にせず、ぎりぎりまでイチャつく。
で、お待たせしているプレゼントはどちらかしら?
期待値をさんざん高めておいて、返答はまさかの「ないよ」。おーーーい!

コンプレックスを脱ぎ捨て、その夜、初めて裸になった

翌日、「アナ雪2」を鑑賞するも、全く観る気のない彼氏は終始、居眠り中。
若干ふてくされつつ、午後は新幹線で軽井沢へ。降り立つと、そこは一面、雪景色。ホテルで早めにチェックインを済ませて、旅のメインディッシュである「軽井沢星野エリアのクリスマス」へ。

高さ10メートルのもみの木にイルミネーションを灯したシンボルツリーや、幸せの象徴とされるやどりぎを象ったライティングが、なんともきらびやかに光を放っている。
もちろん、そこら中カップルだらけ。言うなれば"勝ち組"の空間である。何かの間違いではあるまい。自らも、そのうちの一組であることに優越感を感じずにはいられなかった。

前日までの不満が少々、解消されてきたところで、存分に写真を撮りまくること2時間弱。彼氏を振り回すだけ振り回して、22時過ぎにようやくホテルに帰宅。
その夜、私は初めて裸になった。
何度かセックスはしてきたものの、例に漏れず、処女であった私は、彼氏とて自分のコンプレックスである胸を晒すことはできなかった。しかし、四つ星ホテルの高い天井の下に広がる、真っ白なベッドルームを前にして、脱がずにはいられなかった。

性欲だけは旺盛な彼氏は、ここまでのローテンションが嘘のように目をギラギラさせて、私の身体を貪り食った。
聖なる夜に侵されることへの高揚感が、私を上へ上へと突き上げていく。互いに果てると同時に、心地よい疲労感に満たされて眠りについた。

私が思い描いたプランは必ずしも貫徹されなかったけれど、数日後に届いたクリスマスレターを見て、ご満悦。
「ありがとう。改めて言うことが思いつかない。それくらいには話せてこれたかな。そもそも僕はあまり話さないけど、次会ったときはまた(黙って?笑)ただただぎゅっとしましょう」

2年前のこのデートを機に、クリスマスは軽井沢で過ごすことが2人の定番となりました(贅沢!)。