たしか、2021年が始まる時にも、こんな題材で記事を書いた筈だ。

予定では就職している筈の私はまだ、バイトをしている

当時の私は、緊急事態宣言の煽りをくらって約二ヶ月のニート生活を送っていた。
自粛生活の中で、もともと先細りだった俳優活動も閑古鳥。
自分の年齢や今の職場環境、年収のことなんかがぐるぐると頭の中を巡って、ぼんやりと就職の2文字を形作ったころだ。
当時の私はアルバイトなんて辞めて就職するぞ!と高らかに宣言していた。

そして年の瀬の今、私は未だに同じバイト先で働いている。
予定では既にバイトを辞めて、どこかの企業で働いて半年くらい経っている筈だった。
しかし未だに、どの企業からも色良い返事を貰えずにいる。

転職活動を開始した当初、とりあえず有名どころの転職サイトにいくつか登録し、希望する求人に応募をかけた。
狙うは、ライターやデザインを始めとしたクリエイティブ職。
もともと演劇畑の育ち、劇団の公式ブログの執筆担当、ここへのエッセイ投稿やバイト先での手描きPOPの作成など、思えばずっと物作りに携わって来たから素養はバッチリだと思っていた。

履歴書にもそんな今までの経験をちりばめて準備は万端。
一発通過は難しくとも、二、三箇所応募すればサクッと転職先は決まるだろう。今のバイト先に辞めるっていつ言い出そうかな……。
なんて呑気に考えていた。
それが6月の半ば頃の話だ。

プロに尋ねるため面談へ。仕事の希望を伝えると、困った笑顔をされて

しかし、待っても待っても返信がない。
たまに返信があったと思っても、それは所謂お祈りメールというやつで、最早本文を開かなくてもタイトルだけで結果がわかるようになってしまった。
何度もお祈りメールを送られて、転職なんて楽勝!という自信が揺らぎ始める。

思えば、新卒と呼ばれる時代ですら就職活動を行なっていない。
就活のノウハウも分からず、一人の力ではどうにもならないと思い、プロに相談をすることにした。
既に登録済みの転職サイトには転職エージェントなるものが存在するらしい。
バイトの休みを利用して面談の予約を取った。
希望の職に就くためにどんなステップを踏めばいいのか、プロなら必勝法を知っていると思ったのだ。

期待と不安が半々だった当日。
ZOOM越しに対面したエージェントの方は物腰柔らかそうな女性。
私は緊張しながらもこれまでの経歴や希望する職種、逆に絶対に避けたい職種、などざっくばらんに話をした。

最初にこやかに話を聞いてくれていた担当の女性の表情が段々と険しくなり、相槌が段々と減っていく。どう伝えたものか、と、言葉を探しているように口元がもぞもぞと動いた。
ひとしきり私が話し終わった後、担当の方は困った様に笑うと、
「その条件での就職活動は難しいですね……」
と続けた。

苦い顔をしてくるエージェント。ある時、私より若い担当が言ったのは

いわく、クリエイティブ職は新卒でも倍率が高い人気職。中途採用に求められるのは即戦力で、未経験者がおいそれと入り込める土壌はないという。
10年近い接客業での経歴があるので、営業や接客のお仕事なら紹介出来るが……と、言葉を濁された。

毎日売り上げの数字にばかり追われ、お客様は神様と疑わない顧客に精神をすり減らし……コロナがその傾向に拍車をかけたことからの転職活動だった。
それでは今と変わらない。
社員になるぶん、今よりかかる責任が増えるだけだと思い、曖昧に濁してルームを退室した。

いくつもの転職エージェントと面談を重ね、その合間合間に求人に応募した。
求人募集はなしの礫で、エージェントには苦い顔をされる。
面談を重ねるたびにメールボックスに届く求人紹介のメールは増えるけれど食指は動かず容量を圧迫するだけだった。

先日、また新たなエージェントと面談をした。
おそらく私より若い茶髪の彼女は、やっぱり困ったような顔をしてこれまでと同じ様な反応をする。
面談の終盤に、「社員と同じだけ働いていると言っても、経歴だけで見たらアルバイトはアルバイトなんです。どうしても社員とつく働き方をしてきた人と比べると見劣りします。手取りが下がっても、希望の職種ではなくってもとりあえず就職することが大事ですよ」。

理屈は分かるが、その先に感じる不安。でも、何かを変えないと…

バイト先では10年選手で、並の社員よりもシステムを理解していたりする。
彼女の言葉には、そこで自分が積み上げてきた自信や努力を全否定する様なパワーがあった。あるように感じてしまった。
彼女も言ってみれば接客業。一つでも多くの案件を受注しないといけない。
そんな思いが透けて見えて、落胆したままその場をさった。

もうすぐ30になる。
とりあえず就職してみるべきという理屈はわかるが、その先に自分が求めるような働き方が待っているのだろうか、出来るのだろうかという不安は年々増していく。
それでもとにかく何かを変えないといけない。
今年は悪あがきをするぞ、なんとか環境を変えるぞ!と、諦め半分にそれでも私は宣言する。