時は遡ること、大学に入学する頃の話だ。
私は人生で初めてのアルバイト先である書店の事務所にいた。
そうだ、私は面接を通過し、学業の傍ら、その書店で働くこととなったのだ。

高校生の時にこの書店ができたと聞いて初めて行った時のこと。
私が大好きな本や文具が、「これでもか!」というくらい、お客様から買われることを今か今かと待ち構えているような豊富な品ぞろえに感動し、危うく親に怒られそうになるくらい、商品を購入しかけたのは今でも記憶に残っている(笑)。

大学進学にあたり、どこを受けようか悩んでいるときに、ちょうどその書店の求人が入っていることに気づいた。
それまで書いたことのなかった履歴書を書き、緊張しながら面接を受け、うまく答えられなかった……とへこんでいた矢先、「今回採用になりました」と電話をもらったときの嬉しさを例えたら、今にも宙に浮かびそうなくらいだっただろう。

「研修中も店舗のプロフェッショナル」という言葉にハッとした

さて、話を戻して採用していただいた、これからお世話になるアルバイト先での初回研修での事である。
その時、研修を担当してくださった店長からは、「ディズニーランドが非日常のエンターテイメントを提供しているなら、私たちのお店は日常的エンターテイメントを提供しています」という言葉に心がより一層踊ったのと同時に言われた事が今でも心に残り、現在の仕事での姿勢にも私にとっての軸となっている。

それは、「あなた達はいくら新人で研修中と言っても、お客様から見たら店舗のプロフェッショナルです。勤務中はそのことを忘れず勤務に励んでください」という言葉だ。
この言葉に私はハッとさせられた。
元々研修中の身ということは誰かに沢山助けてもらわないといけないけれども、「研修中なので、新人なのでわかりません」という返答をし、その場を離れるという行為はお客様にとって失礼な応対である。この場合、近くの先輩スタッフや担当部門の社員に引継ぎをお願いするということが基本の所作として学んでいた。

未熟でもどかしい日々で見つけた、+αのマニュアルを越えた対応

私は希望をしていた書籍担当に配属となったが、売り場やレジに立っていると最も問い合わせが多い部門になる。そのため、できる限り社員との研修で学んだことを活かして早く検索できるように努めたけれども、新人で不慣れな時はまだまだ未熟だ。
近くにその担当部門の方がいたらすぐ聞けるが、そうではなかったときにお客様を待たせてしまうことがあり、もどかしいと思う日々が続いていた。

アルバイトをしている身でありながら、ずっと悩んでいたことがあった。
「日常的エンターテイメントを提供しているこのお店で、アルバイトの自分ができるプロフェッショナルの対応とは?」
ということであった。
大学も経営学部だったので、そこでの講義でもディズニーランドのことは話がよく例としてあげられており、私としてはディズニーのキャストさんに近づけられるよう対応、接客を越えたおもてなしを心がけようと心に決め、本の定期購読などでよく来られるお客様には「最近の調子はいかがですか?」「ご来店お待ちしておりました!」といったご挨拶であったり、天候急変を店内で知り、そのなかで傘を持たれていないお客様には「このあと足元滑りやすくなってしまいますのでお気をつけてお帰りくださいませ」などといった、ちょっとした+αのマニュアルを越えた対応を心がけていった。

この経験がプロ意識に変わり、私にとっても大きな財産に

この書店でのアルバイトは、就職が決まり、その会社での内定者アルバイトをすることになったため卒業直前まで働く事はできなかった。しかし、ここでの「新人で研修中の身でもお客様から見たらプロフェッショナル」という言葉は、新卒入社した会社でも大いに生き、お客様対応の面でプロ意識をもって、いただいた仕事に励むことが出来たことは、自分にとっても大きな財産になったと思う。