就職する気がまるで無かった私の就活は、周りと一線を画していた
私は世に言う就職活動というものをまともに経験しなかった。
説明会に行って、エントリーシートも書いたし、面接も行った。ある企業からは内定も貰った。だけど、私の就活は他の就活生とは一線を画していた。
なぜなら、就職する気がまるでなかったから。落とされるんじゃないか、希望の会社に入れなかったら、自分だけ就職浪人になったらどうしよう、そんな迷いも一切なく、私は大学卒業後も演劇を学ぼうとしていたのだ。
しかもよくある役者志望でもなく、もっと舞台の世界を知りたい、公募のない職種も無数にあるし、なんとかなるんじゃないか、という漠然とした希望と自信をもって、会社という組織に属することを拒絶していた。
周りが就活でピリピリしているときに、落ちることが怖くない私は面接を思いっきり楽しんだし、いつだって強気でリラックスして、会場の適度な緊張感を非日常の刺激と捉えてワクワクして過ごしていた。
ただ、私が戦っていたのは「大学卒業したら新卒採用で会社に就職するもの」という世間の常識だった。
やりたいことを仕事にできる可能性を忘れている人があまりにも多い
今の日本は新卒であればそれだけで、何のスキルがなくても大手企業に採用されるチャンスがある。ポテンシャルで採用してもらえる。
だけど、そこで一旦就職すれば、その先は転職したとしても定年まで休むことなく働く人が大半だ。1年間かけて世界旅行する時間もなければ、キャリアを中断して再び学びなおすことも、なくはないがごく少数の例外だ。
本当にそれでいいの?周りの就活生を見ると、採用されることに必死になって、本当にやりたいこと、好きなこと、それを仕事にできるという可能性を忘れている人があまりにも多いように感じた。
それだけじゃない。
当たり前のように会社訪問や説明会に行くけども、必ずしもその全員が正社員という働き方が向いているわけじゃない。私はずっと、組織に囚われるのが恐怖だった。
収入の安定も大事だけれど、正社員になれば暗黙の了解でその先何年もその会社にいることを前提として物事が進む。
私はもっと予測不能でいたかったのだ。将来が保証されることよりも、自分の努力次第でその時々で進みたい方向を決められて、転落する可能性を含んだとしても、人生もっと博打を打ち続けていたかった。
会社に選ばれることだけが成功じゃない。適正を知ることが大事
最近になって、起業する人も増え副業がポピュラーになり、働き方はどんどん多様化してきてはいる。とはいえ、新卒採用は主流で、それに乗らない学生なんて専門職くらいじゃないだろうか。
就活することに疑問を感じている人だって絶対いるはずなのに、その波に乗り遅れたら特殊技能でも身につけない限り、そのあとの就職が厳しいからみんな必死になる。会社勤めを経験しない、正社員になったことのない人は事情があるんじゃないかと、その後再び就活しようとしたらどうしてもネックになってしまうのが現状だ。就活生でなくなった私は今でも思う、本当はもっと選択肢があっていいはずじゃないか、と。
新卒採用が当たり前の常識になっている今、もしもっと多くの選択肢が当たり前のように並べられていたら。こんなにも追い詰められたり、目標を見失ったり、焦る学生は生まれないだろう。ちょっと旅行してから考えますとか、新卒採用前提でなくとも複数の業種でインターンもっと経験してみますとか、バイトしながらもう少し会社探しますとか、なんだって当たり前のように許される「常識」の世界が来たらいい。
少なくとも、組織に属するよりフリーランス、自営業の働き方の方が向いている人は存在するし、就活となると何をしたいか、何ができるかばかり考えるけども、同じ仕事をするにしても自分に向いた働き方というのもあるのだ。
会社に選ばれることだけが成功だと思わないでほしい。だって、自分の適性を知ることの方がよっぽど成功に近づくのだから。