人生行き詰ったと感じたとき、私は突発的に旅に出ることがある。その時々の行き詰まり具合や得たい刺激によって行先は様々で、中には旅といえるか微妙なラインのものもある。ちょっと遠出しただけじゃん、くらいの日帰り旅など。
コロナ禍になってからは、ただ行きたいからという衝動だけでは海外に行くことも叶わず、国内ですら旅行は憚られたので多くはその「ちょっと遠出したくらい」の旅になったが、それでも毎回「旅」に出ることで何かリセットだったり、ガス抜きが出来たりするものだ。
以前よりも何かとストレスのかかることが増えたコロナ禍で、ぜひお勧めしたい「旅」の方法を紹介しようと思う。
SNSや日常生活から離れて、自分と向き合える時間
まず一つ目のポイントは、一人で行くこと。
ここでいう「旅」の目的は行き詰った状況から抜け出したり、リセット、考え方を変えたり自分と向き合うことなので、誰かとワイワイ出かけるのではなく、黙々と一人で行動する。ぼーっとするだけにせよ、一旦SNSから離れて、映えなくてもいいから自分が本当に行きたいところ、みたいもの、触れたいものを考えてみると良い。
つい携帯をいじってしまうようなら、一冊文庫本を片手に出かければお店に入ったりしたときにも手持ち無沙汰にならないので、本選びも事前にするといいかもしれない。
できれば自己啓発系ではなく、小説のような物語に入り込めるもの。自己啓発ものはどうしても現実で、抱える自分の現状や悩みとリンクさせるのでリフレッシュにはなりにくい。
観光地でも繁華街でもない。何でもない暮らしを垣間見ながら
二つ目のポイントは、近場を選ぶこと。
これには感染対策的な意味ももちろんあるが、徒歩で行くから、が一番の理由だ。旅というと電車やバスを駆使して見知らぬ土地に出かけるイメージが多いだろうが、案外近場にも行ったことのないエリアはあるし、普段なら電車を使って30分もあれば行けるような範囲内で行先を決め、そこまで歩いていく。
自転車でもなく、お勧めはあくまでも歩き。観光地でも繁華街でもない道を通ることになるのだが、その道沿いにも人は生活していて、お店もちょこちょこあったりする。そういう普段見てこなかった初見のものに触れていく。
この家のベランダ素敵だな、とか、今もこんな個人商店あるんだ、とか。もちろん途中気になるお店があったら入ってもいい。
日頃1時間以上歩き続けることがそもそも少ないので、長時間初めての道を歩くだけでも新鮮味はあるものなのだ。
ついでに言うならば、イヤホンもせず、自然の生活音を聴きながら歩いたほうが周囲を観察しやすく、日常の延長から切り離した「旅」っぽさが出るのでお勧めだ。
大切なのは、いつもと違う場所でゆったり過ごしてみること
三つ目のポイントは、目的地に数時間はしっかり滞在すること。
近場に設定しているため、目的地についてすぐ帰ると本当にただの散歩になってしまう。お勧めなのは温泉があれば温泉がベストだが、なくても銭湯などの入浴施設に行くこと。
単純にリフレッシュできて気持ち良いのはもちろん、迷いや悩み、しがらみを祓い落とすような感覚で、一人でゆったり考え事をするにも、何も考えずにぼーっとするにも最適だと感じる。お風呂上りに美味しいものを食べてもいいし、言うまでもなくお風呂上りのビールは最高だ。
あとはせっかくなので神社仏閣の類、パワースポットめぐりを兼ねるのもよくやるパターンで、ちょっと大きめの神社なんかは境内だけでも十分観光地のようだし、空気が澄んで気持ち良い。
たとえどんな形になろうとも、定期的に旅に出たい
最後に、お土産なんかも選ぶとより「旅」っぽさがあって非日常が味わえる。
普段から行こうと思えばすぐ行ける距離なのに行かない場所の、そこにしかないものを探してお店を巡るのもその町を知れて良いし、帰宅してから余韻に浸るために地元のパティスリーのおやつとか、そういう些細な自分へのご褒美を買ってみるのもより楽しい。
本当は、私は海外旅行が好きで、常に刺激を求めているタイプだ。なので遠出することが憚られるコロナ禍でいかにその代替策として感染対策と両立させながら自分を楽しませられるか考えた結果、この徒歩で近場の見知らぬ道を探索するという「旅」に出会った。
何もすることがない休日をどう有意義に過ごすか、日々繰り返される代り映えのしない生活にうんざりしたことがきっかけだが、その気になれば近所にも新しい刺激は溢れていて、遠出しなくとも旅行は成立することに気付かされた。
旅は、毎日のルーティンから外れて新しい視点や考え方を与えてくれる起爆剤になり得るし、よく歩けばそれだけでも謎の達成感にも包まれる。だからこんなご時世になってしまったけれど、いや、なってしまったからこそ、私はやはり、どんな形になろうとも、定期的に旅に出ようと思うのだ。