コロナウイルスの流行によって、旅行どころか帰省さえも悪者のようにあつかわれているかと思えば、GoToキャンペーンで旅行が勧められたり。
ここ2年間、世の中で旅は両極端な扱いをされているように思う。
クラスメイトを恐れ、引っ込み思案だった高校時代、一人旅を始めた
現在の私は、コロナウイルスが怖いから旅のことが怖くなってしまっている。
けれども、もともと私は一人旅が大好きだ。
大学に入ってからは2ヶ月に1回くらいの日帰り旅行、半年に1回は泊まりで国内旅行をするのが、私の日常だった。このように、旅は私の人生において欠かせない要素だったのだ。
私が一人旅を始めたのは高校時代。
当時の私は引っ込み思案で、何かやりたい事があっても、何もせず誰かが行動するのを待っていた。
なぜなら、当時の私のクラスメイトには、他人の失敗をいじって笑いにする人がいたのだ。
面白おかしく笑いにしてはいるのだけれど、私は失敗をいじられるたび、心がチクチク痛んでつらかった。
あいつにネタにされたくない。何かをして失敗したらあいつにいじられる。そうやって、日常生活で引っ込み思案は加速していった。
自分が行きたいから行く旅に感じる、自分のアクティブな一面
そんなある日、私の家から電車で1時間ほど離れた港で、珍しい船の一般公開があるというニュースを私は目にした。
私は乗り物好きだが、親や友達はそうでもない。
多分誘っても誰も来ないだろう。それなら、一人旅をしちゃおう!
不安と期待でいっぱいになりながら、ICカードにチャージしたのを覚えている。
この旅は学校行事の修学旅行とは違って、自分が行きたいから行く旅だ。つまり、私って案外アクティブなんじゃない?と自分の新たな一面を感じながら、私は初めての一人旅への一歩を踏み出した。
半日くらいの日帰り旅行だったけれど、当時の私は緊張に負けないように精一杯の背伸びと勇気で背筋を伸ばしながら電車に乗った。
最寄り駅の見慣れた風景が、一人旅をしていると思うだけでキラキラ輝いていた。
電車を乗り換え、まだ見えない港に心躍らせながら車窓の外の景色をながめれば、金太郎飴みたいにそっくりな家が立ち並ぶ住宅街が流れ去っていくことさえも、幸せにつながるメッセージのように感じられて、こんなに世界って輝いてるんだ!と謎にテンションが上がっていた。
港が近づくと、目当ての船が朝日を金色に反射しているのが私の目に飛び込んできた。
たったそれだけで、今まで生きてきてよかったなぁ、とじんわり温かいものが身体中に広がった。
一人旅で一番びっくりしたのは乗組員さんと楽しく話せた事
自分が思っているよりも自分が豊かな感受性を持っていることに、自分自身びっくりしたのを覚えている。
このように、まだ目的地についていないのにテンションが上がっているわけで。
港に着いた時には、普段の引っ込み思案で下を向いた私はどこへやら、上を向いてニコニコしている新たな私が出来上がっていた。
乗組員さんの解説を聞くだけではなく、自分から乗組員さんへ船について質問をしたり、船を題材にした漫画の話をしたりして盛り上がった。
実は、一人旅で一番びっくりしたのは乗組員さんと楽しく話せた事なのである。
クラスメイトたちがお互いの悪口で盛り上がるのが高校生活の主なコミュニケーションだった。だから、誰かが誰かのことを悪く言っているだけでなんだか申し訳なくなってしまってしまう私は、自分のことをコミュニケーションができない人間だと思い込んでいた。
私、初対面の人とちゃんと話できるじゃん!ってことは、もしかして自分にコミュニケーション能力あるの?!と、一人旅を通じて気づけたのだ。
新しい自分に出会えて、世界が輝いて見えて、新しい人間関係を築けるもの、それが私にとっての一人旅。
まだ知らない魅力的な世界と出会うための旅が、私の人生には必要なのだ。