私は人見知りでありながらも、周りから明るい性格と言われることが多かった。
理由は人に対して空想の自分を演じることで、人との関係を悪くしないように人付き合いをしてきたからだろう。

この性格は、幼い頃より、父の仕事の影響で転校が多く、親友と呼べる友人ができないまま、別れを告げることが多かったからだろう。そのため、そこまで人との距離を詰めなくても、「なんか良い人」という位置付けで終わる関係でやり過ごせていた。

つまり、ある意味その場凌ぎの女優といったところであろうか。だから、困難に直面しても、それが解決しなくても、誰かを頼らなくても、自分がいなくなって誰かが片付けてくれてしまうから、言ってしまえば誰かを頼る必要がなかった。

一方、家族の中では、陽気でお調子者の性格。人を喜ばせること、笑顔にすることが大好き。でも、これは、外での作り物の自分と違う。
明るいという点では共通しているかもしれない。しかし、良い人を演じているか、演じていないかという点で決定的に違うのである。その点、家族を頼り助け合うのは当たり前だが、その他の人たちとはどうも深い人間付き合いが苦手だった。

人と深い関係を持ったことがないのに、チームスポーツの部活に入った

この性格の私が、家族ではない誰かを頼らなければならない状況に直面した。それは、父が単身赴任となり、高校は同じ学校に3年間通うことになったからだ。私はチアリーディング部に所属することになった。

これまで、人と深い人間関係を構築するなんてしたことなかったのに、何を血迷ったのか、チームスポーツを高校で選んでしまい、週5、6回の練習と毎日のお葬式のように暗い反省ミーティング。とんでもない部活に入ってしまった。
すぐに辞めればよかったのに、ここでまた出現する女優の私。やめようにも、転校するわけではないからその後の高校生活で人間関係が気まずくならないように、部活動をやめようにもやめられなかった。

ある日、私がチアリーディングの大会に向けての演技を練習した時のことであった。
練習中にコーチに投げかけられた一言がある。
「勝つ気あんの?」

最初は何を意図として、このことばを伝えられたのか理解できなかった。
なぜなら、大会で勝つ気で毎日練習をしていたからだ。

しかしながら、私のチームは、毎年全国大会は予選落ち、地方大会は入賞には程遠いという現状があった。こうした現状を踏まえて、チームで勝つことについてミーティングを行い、コーチが示したかった意図を明確にさせようとした。

このミーティングを踏まえて、明確になったのは、チームとしての方向性がバラバラだったということである。
チアリーディングは、個人技術を向上させることのみでは、チームとしての技術力向上に直接はつながらない。その中で、私たちは、個々では努力してきたかもしれないが、集団だからこそ発揮される魅せる演技という部分で、勝つチームには足りていなかったのかもしれない。

家族のような仲間と出会い、私は空想の自分を演じることを手放した

これまで、困難な状況に直面しても、私一人さえうまくやり過ごせばなんとかなっていた。そのため、人のことなど正直どうでもよかった。自分さえ努力していれば、それとなく結果がついてきたからだ。
しかしながら、協力しないと、成果を得られないとなるのであれば、話は別である。深い人間関係の構築には、これまでのような、上辺だけの人間関係ではやっていけないことに気づいた。

人に自分の思いを伝えることは、嫌われる覚悟を持つ必要があり、これまで避けてきた自分にとっては大きな挑戦であった。
でも、チームスポーツにおいて、成果を生み出すためにチームを頼った。この経験を通して、胸の内をチームに曝け出すことにより自分は一人ではないんだと思うことができるようになった。
その結果、引退の大会では、チーム力の面で大きく成長し、東京都大会では10位に入賞することができた。この変化を通して、価値を得ただけではなく、演じなくていい家族のような仲間を得ることができた。

自分一人で頑張ることも大切である。しかし、一歩引いて、周りとの人間関係について考える必要もあると学んだ。