歓声の中、青マットの上、センターで輝くあの人。初めは会えるはずもない遠い存在だった。テレビの特集であの人の存在を知った時、一目惚れとはこういうことかと分かった気がした。

テレビに映る彼女に憧れた私は、チアリーディングと向き合うことに

彼女は、チアリーディング界の有名人。高校の全国大会の優勝常連チームの元キャプテンであり、彼女がキャプテンをつとめた世代もまた、そのチームは優勝していた。
テレビに映った彼女は、16人の演技でも一際輝いていた。人間離れした技を軽々とこなし、キラキラな笑顔で観客を魅了していた。精神面でも、自分の弱さと向き合い、涙を流しながらも決して諦めず、チームのみんなを最後まで引っ張っていた。
テレビの向こうの世界がキラキラと見えたあの頃、私はまだチアリーディングに対して真摯に向き合えていなかった。

先輩の姿を見てから、私は本気でチアリーディングと向き合うことを知った。親やチームメイト、コーチに言われたわけでもなく、黙々と練習を重ねた。
先輩に近づきたい。私の心の中は、ただただそれだけだった。そうやって、やる気に満ち溢れながら日々努力するうちに、チームの中でどんどん上手い方へと成長した。コーチが認めてくれることも増えた。
それでも、私は満足しなかった。なぜなら、先輩はいつでも私のずっと先を走っているから。

ついに話せた憧れの人。先輩と同じ景色を見るために頑張ろうと思った

先輩の進学した大学と、合同練習ができるとわかった時、感動のあまり震えた。想いは収まらず、合同練習前日にメッセージを送り、当日、ついに私はその先輩と話すことが出来た。直接先輩の優しさに触れ、私は先輩のことがますます大好きになった。

それからは、できない技があると、先輩に動画を送り、アドバイスをもらった。先輩が、言ってくれる言葉は何一つ無駄にできない。先輩と同じ景色を見るために頑張るのだ、と。メッセージを交わす度にモチベーションが上がった。前より少し、先輩との距離が近づいた気がして嬉しかった。大会で会えた時には一緒に写真を撮ってもらった。

実を言うと、私の中学からの6年間のチアリーディング生活の前半は、ほとんどが闇の中だった。サボり魔と呼ばれ、チームの足を引っ張り、涙を流した時もあった。
そんな中、高校にあがり先輩と出会い、大会の演技で初めてセンター、つまり先輩と同じポジションにつくことが出来た時は、こんな私でもやればできるんだと本当に嬉しかった。努力してきて本当に良かったと思った。

そんな憧れの頂点である先輩と一緒にチアができる世界線はないのかと悩んだこともあった。同じ大学も受験したけれど、結局そこには進学しなかった。先輩はいつでも、雲の上の存在だった。

今の状況はあの時と似ている…。慕ってくれる後輩の存在で気付いた

先輩と出掛けた時に、こんなことを言っていた。
なぜ、ダンスでいつもセンターを取れるのか。負けたくないもん、と。
その負けず嫌いの一心でどれだけの努力があったのか。いつでも誰よりも上手に技をこなす先輩。チアリーディングに対する愛と情熱は誰にも負けないのだろうと思った。
私自身、負けず嫌いなところがあり、重なるところもあった。それだけで何倍も、憧れが強まった。先輩みたいになりたい。いつか、誰かから憧れるくらい輝くチアリーダーに。

高校3年生になった今、とても嬉しく感じていることがある。私が少しは先輩に近づくことが出来たのではないのかと。
なぜそう思えるのか。それは、私の後輩たちのおかげ。その可愛い可愛い後輩たちは、動画を送ってきてくれて、私はアドバイスをする。
あれ、この状況はどこかで……。そう、私が先輩に言ってもらったことを大事に大事に、後輩たちに伝えているのだ。慕ってくれる後輩たちの存在は、いつだって私の背中を押してくれる。
私も誰かの「憧れの人」になれたのかな。