私は1994年(平成6年)生まれ。私と同世代の人たちは、自分より何歳も年上の人から、このような言葉を言われたことがあるのではないかと思う。
「最近の若い子は知らないと思うけど……」
「これだからゆとりは」
「わ~、平成生まれだって~」
それらの言葉の後には、物事を知らないことに対する驚きや嘲笑、さらには批判の言葉が続くことが多い。
私は大学生のとき、飲食店でアルバイトをしていた。40~50代の店長やパートの女性から、度々そのような発言を受けていた。
若者批判をする人も、私と同じ年齢くらいの頃はされていた側なのに
実家のキッチンはIHで、ガスコンロを使ったことがないだけでなく、缶切りの使い方も分からなかったし、包丁で野菜や果物の皮を剥いたこともなかった。
隠していたら仕事にならないため、できないことや知らないことを正直に申し出ると、必ずこう言われた。
「やだ~、今の子って缶切り使ったことないの?」
聞けばちゃんとやり方を教えてもらえたし、発言した側にも悪意はなかったのかもしれないが、私の無知に対するその一言が苦痛だった。
今振り返れば、私も世間知らずだったとは思う。しかしジェネレーションギャップに対してそこまで反応し、わざわざ言葉にする必要はあったのだろうか。
ネットで調べてみると、新しいものや若い世代を批判する風潮は、昔からあったようである。
私に「今の若い子は……」「ゆとりは……」と言ってくる世代の人たちも、私たちと同じくらいの年齢のころは同様に若者批判をされたらしい。
それなのに、数十年経ったら、自分が言われて嫌だった言葉を下の世代に投げかけている。
こんな悪循環、馬鹿馬鹿しい。自分は絶対にそんな大人にならないと心に決めた。
「今時の高校生っていいよね」。自分が発した言葉にショック
しかし最近、同学年の友達との会話の中で、自分が発した言葉にショックを受けた。
「今時の高校生って、アドレス交換しなくても、グループLINEから好きな人との連絡手段入手できるからいいよね。うちらの時代じゃ考えられない」
批判ではないにしても、これは完全に私の嫌いな「今の若い子は……」発言である。実際に「若い子」に向けて発言したわけではないが、自分の中にそのような思考が生まれていたことに驚き、がっかりした。
新しい世代と自分の若いころを比較してしまうことは、仕方がないことなのかもしれない。
もしかすると、大人は、自分の若いころと現代とを比較せずにはいられない生き物なのかもしれないとさえ思える。
SNSの最新の機能が自分の学生時代にあったなら。
最近のファッションのトレンドが、自分の10代のころに生まれていたら。
その「たら」「れば」の後に続く言葉が「最近の子が羨ましい」でも「昔のほうがよかった」でも、あれこれ想像するのは面白い。
昔と現代の比較は、自分の頭の中だけにとどめておこう
ただ、それを新しい世代に面と向かって伝えるのは的外れだし、かなり悪趣味だ。自分が経験したように、言われた側はどう反応してよいか分からないし、自分に非はないのに悪者扱いされているようで腹が立つ。
自分が言われて嫌なことは他の人にも言わないという、幼き日に教わった簡単なことを忠実に守ること。
昔と現代の比較は、自分の頭の中だけにとどめておくこと。
それが、自分がなりたくなかった大人にならないためにできることだと思う。