私服がダサくて「隣を歩くな」と言われた私の魅力は、着物姿にあった

2022/03/27

誰に見せるわけでもなく、何かしらのイベントに参加するわけでもなく、何も予定のない日に、ただひとりで着物を着ることが好きだ。
着物を纏った自分は、呆れるほど生き生きしている。着物を着ている自分が好きだ。こんなどうしようもないナルシストの誕生秘話をちょっぴり語らせていただく。
きっかけは私の長年のコンプレックスだった。何を隠そう、私は私服がダサいのだ。

女性がみんなの弁当箱を洗うことが「当たり前」だった職場で

流行りも、何着たらいいかも分からず、私服のダサさは学校で噂に

昔から洋服にあまり興味が持てなかった。
小学生の頃の写真を見返すと、水色の上下ジャージばっかり着ていた。友達とのプリクラにも、旅行先でも、どんなときも水色ジャージ。夏は薄い水色ジャージ、冬は裏地が暖かい水色ジャージ。それでも小学生のときはあまり気にしたことがなかった。
が、中学にもなると、周りがどんどんオシャレになって、私の私服の適当さが浮き彫りになった。さすがに私もオシャレしなくては、と、母に頼んで服屋さんに連れて行ってもらった。でも流行りなんて分かるわけもなく、何を買ったら正解かも分からなかった。
私服で友達と遊ぶ日の朝は、毎回大騒ぎ。自分の私服を見せるのが恥ずかしくて遊びに行くのも嫌だったし、遊んでいるときも「なんでこんな服選んだんだろう」という思いが先行して、心から楽しめなかった。

そんなこんなで私服改革ができぬまま高校進学。友達と初めて私服で遊んだとき、衝撃の一言をくらった。
「ダサい、恥ずかしいから隣歩くな！」
さらに追い打ちをかけて、軽く学校で私の私服がダサいと噂になっていることも知る。

奮発して洋服を買ってみてもむず痒く、鏡に映る自分が好きになれない

深く傷ついて学校を休んでしまった（一日だけど）。悔しくて雑誌の立ち読みをして必死に服について調べた。
そもそも私はガリガリで胸がないし、おしりも色気のない幼児体型。そんな私が洋服を着ると、野暮ったくなるし、自分のスタイルが露骨に出るから心底嫌だった。

私服について散々落ち込んだ高校も終わり、夢のキャンパスライフ！！！と思ったが……、キャンパスライフには私服が付き物だ。
大学でできたオシャレな友達に、分かりやすく「え？」って顔をされた。想像はしていたけれど、また落ち込んだ。雑誌の立ち読みでは事足りず、バイト代で数冊買って、私に合う服を探した。
にしても高い！！！高すぎる！！！私はどうも洋服に5000円以上かけるのが納得できなかった。もっと旅行代やライブ代に充てたいから、好きじゃないものにお金を使うのが嫌だった。でも、周りにダサいと言われる方がもっと嫌だ。だから、半ば強引に自分を説得させ、コーデの必要のないワンピースを奮発して買ってみた。
オシャレっぽくはなったが、なんだかむず痒い。結局人の目を気にした服ばっかり選んで、鏡に映る自分が好きになれなかった。

着物で気づいた自分の魅力。自信が湧き、服の魅力を見つけた

そんな時出会ったのが着物だった。昔から和柄に魅かれていたのと、趣味の旅行がコロナでできなくなって、新しい趣味を見つけたいと思い、着付け教室に通ったのが始まり。
そこで衝撃だったのが、着物は、胸もくびれもなくして、まっすぐなシルエットの方がいいということ。洋服ではみすぼらしくなった私が、着物では俗にいう「イケてる」姿になったのだ（ザ・日本人！の一重瞼で平べったい顔なのも似合う要因となったのかも）。
お教室で初めて着たとき、姿見でいつまでも自分の姿にうっとりしてしまった。私にはこんな魅力があったのかと気付き、自信が湧いてきた。

着物は奥深い。着物や帯の組み合わせ次第で、無限にコーディネートができる。洋服ではオシャレ上級者にしかできない、柄と柄の組み合わせでも、誰でも簡単にオシャレに変身できる。しかも同じものを何回着てても流行りがなんだとどやされない。何年先でもその鮮度は、色褪せないのだから。

自分だけの楽しみを見つけてからは、人目を気にした洋服を選ばないようになった。自分が本当に着たい、トレーナーやジャージを堂々と着てやった。そしたらだんだん洋服も好きになった。
着物という確かな拠り所があるからこそ、私の毎日は自由になった。