絶望的な気持ちに。自分が何を話していたのか記憶はない

広い研修会場にマイクをもった私。100人もの同期が私を見ている。
何を話そうとしているのか、自分は……何を話したのかまったく覚えていない。
その瞬間、同期に「できないやつ」のレッテルが貼られたような気がした。

4年以上前の、新入社員の入社半年後研修。会社の研修お決まりのグループワーク。しかも、必ず発表がセット。
だいたいアルファベット順にグループが決められていて、Aグループから順にマイクがまわってくる。マイクがまわってくるまで、私のグループは誰が発表者か決まっていなかった。
マイクが回ってきた途端、他のメンバーは目を伏せる。あるあるだ。話すことの内容も決まっていない。心の準備ができていれば、何を話そうか、多少決めておける。ただこの時、グループワークもそこまで盛り上がっていなかった。何も考えはまとまっていない。

自分の目の前にマイクが置かれる。「私か……」と半ば絶望的な気持ちになりながら、立ち上がる。そのあと自分が何を話していたのか記憶はないが、支離滅裂な私の発表に研修会場が冷え切ったような気がした。

もしかしたら自分はいつの間にか成長できているのかも

昔から人前で話すことが本当に苦手だった。授業中、先生にあてられることも憂鬱で仕方なかった。人前で声を発したくなかった。
学生時代の同級生、社会人になってからの同期、なぜ自分の周りの人は、みんな流暢に人前で話すことができるのだろうと、うらやましくて仕方なかった。
カンペなしで発表に臨む勇気などなく、発表するときは、台本をつくった。人前で話すことの苦手意識は幼い頃から、それは25歳を過ぎた今まで続いている。

けど、ここ最近、不思議なことが起きている。
同僚から、「話しが上手いから、○○さんは大丈夫」「よくそんなにすらすら話せますね~」とか、話すことを褒めてもらえることが増えた。
あれ、もしかしたら自分はいつの間にか成長できているのかも、そう思えるようになった。
仕事柄、取引先とのやり取りで初対面の人と話すことが多く、また中堅社員となり、何十人もいる会議で毎月計画を発表する機会も増えた。人前で話すことへの抵抗感や恐怖心が気づいたら薄れてきたのかも。

今まで発表の時に欠かすことのできなかった、手作り台本の存在がなくとも、臨めるようになった。もちろんまだ、要点メモは必須だけれど。
けれど、人前で話すたびに、私が話そうとしていることは伝わっている?誰か教えて!という気持ちになる。

結果を出せたら、もっともっと自分のことを好きになれる

仕事をすることが好きかと聞かれたら、好きではない、と答える。けど、仕事をしている自分が好きか、と聞かれたら、好きと答えると思う。
毎日、追いつかないほどのメールや、山積みの書類、日々の業務に忙殺されていて、一体何のスキルが身についているのか、と自信を失うことだって多くある。それでも、毎日仕事をこなしているからこそ、埋もれて気づいていない「できるようになったこと」は私だけでなく、きっと社会人みんなにある。

私は気づいたら、自分の苦手だった「人前で話す」ということを少しだけど克服できた。それ以外にも、仕事を通じて、知らない自分に出会えた。
仕事を頑張っているからこそ、休みの日にちょっとだらけちゃう自分のことも許せるのかもしれない。

ただ、私は仕事で目に見える結果を残せているわけではなく、苦手を克服したことに達成感を味わってはいけない。
もう少しで社会人になって6年目の春を迎える。目の前の仕事に必死に食らいつくことで、少しばかりの自信をつけた私は、これから結果を残していくフェーズに進んでいく必要があるのかもしれない。

仕事は私に自信をつけてくれるもの。自分の成長と、比例していくように、結果を出し、会社にも貢献できたら、もっともっと自分のことを好きになれる。
2022年度がもう少しではじまる。ここからだ。