仕事ができなくて周りに迷惑をかける自分が嫌いだ

私は仕事ができない。
ミスばかりするし、行動も遅く、人付き合いも下手。
できないことばかりで自分が嫌になる。

やりたいことが分からず、受かった会社に就職した。
ある日、交代制の昼休憩から戻ると、失望した様子で怒っているお客様がいた。いつも穏やかで、職員と気さくに話してくださる方。上司と先輩方が硬い表情で謝り対応していた。

原因は私だった。以前そのお客様の手続きをしたときに、ミスをしていたのだ。そのせいで、必要なサービスが受けられないという。
血の気が引くとはこのことか。
いつも利用してくださるお客様に不便をかけ、嫌な思いをさせてしまった。
いつも優しい上司と先輩方に、とんでもない迷惑をかけてしまった。
その事実は私を打ちのめした。

業務もコミュニケーションも失敗してばかり。
正確にやろうとすれば遅くなり、早くやろうとすればミスをする。
「努力が足りない」「同期のあの子はもっとできるのに」
できない自分を何度も否定した。自分が嫌いだった。

失敗が怖くなり無職に。焦燥感や不安のなか、これまでと向き合った

失敗するのが怖くて、正社員の仕事を1年で辞めてしまった。就職が決まったとき、家族はとても喜んでくれたのに。
アルバイトも長く続かない。求人広告によくある「アットホームな職場」に馴染むことはできなかった。
そうして辿り着いた先は、無職である。

親に負担と心労をかけてしまう申し訳なさ、どんどん減っていく貯金、自分だけ置いて行かれるような焦燥感、将来への不安。同い年のアーティストが活躍する姿を見て、勝手に比較し落ち込む始末。
仕事をしないということは、天国ではなく地獄だ。
仕事をしていたときとは別のしんどさがある。

無職になって唯一良かったと思うのは、脳の空席と時間ができたので、今までの仕事と向き合えたこと。
反省ではなく後悔ばかりしていたなと思う。失敗した理由とどうしたら改善できるかを、具体的に考えるべきだった。
そして、心のどこかで「やりたい仕事じゃない」と逃げていたことに気付く。それが仕事に出たんだと思う。
私がやりたい仕事って何だろう。

私の側にあった本。演劇で得たもの。私ができることは

悪口を言われ教室に居場所がなかった学生時代、側にいてくれたのは本だった。
仕事で心に余裕のなかった社会人1年目、毎週のドラマだけが楽しみだった。
高校生のとき、漫画家になりたかった。担任の先生や家族に反対されて諦めてしまった夢。
1回しかない人生。私を支えてくれた、表現に関わる仕事がしたい。

コロナ前、演劇のワークショップに参加した。とても自由で、居心地が良かった。
1つのテーマや台本を十人十色の方法で表現する。「こうしたら良い」というやり方はあっても、順守すべきマニュアルはない。
どうしたらいいか考えて表現し、褒めてもらえた。自分の中にはない表現や価値観を知った。自分の個性を大切にして良いんだと気付いた。嬉しくて、生きていてよかったと思った。

こんな自分にも、できることがある。
何度も挑戦しているが、まだ仕事を得ることはできていない。
でも負けない。
やりたい仕事から逃げたくない。

仕事を長く続けて、私を大学まで行かせてくれた両親。
経験を積み重ねて活躍し、どんどん前へ進んでいく同世代の子たち。
素晴らしい仕事をなさる先輩方。
とてもとても、かっこいい。
私もかっこいい人になりたい。