ピンクといえば、女性らしさ、春の桜、ハートなど、どちらかと言えば「女」がメインなイメージがある。
わたしは、昔からピンクが好きだ。ピンクと一口で言っても、淡いピンクからビビットなピンクまで様々なピンクがある。わたしは淡いピンク、春の桜の花びらのようなピンクが好きだ。
ピンクが好きな理由は特にこれ!というものではなく、女性らしいからとかそんな理由でもない。昔からカバンや財布を買うときはピンク色のものを自然に選び、気がつけばピンクが周りを彩る存在にいつの間にかなっていた。
そんなピンク色とも、異性が交わると、距離感が芽生えてしまった。
たかがピンク、されどピンク。別れても、色を捨てられなくなる存在感
以前勤めていた男性と食事に行った時に、ピンクは突然、色が変わったように距離を感じた。その男性とは普段は仕事の話しかせず、プライベートな会話をするのがほぼ初めてだった。
食事も会話も進み、いい雰囲気だった時に、男性は携帯を取り出した。携帯ケースがビビットのきいたパンチのあるピンクだった。男性がピンクを持ってはいけない、だなんて偏見じみた考えは持っていないが、何故ピンクを持っているのか聞いてみた。
「ピンクお好きなんですか」
「前の彼女が好きで、自分も好きになったんだよね」
ふーん、と思いながら聞いてたら、突然思い出したかのように男性は前の彼女の話を始めた。
「別れたのに、なんか捨てられなくてさ。たかが携帯ケースって言っても一緒のものを使って別れたら捨てるなんてできなくて。家にあるものもピンクの物が多く残ってるんだけど、捨てられなくって」
別れて日が経っていないのか、まだ彼女を忘れられないのか、その男性はピンクを引きずっていた。
「ものを捨てるっていうか、この濃いピンクの物を目に触れないようにしたら、本当に別れを迎えてみたいにならない?」
この時に思った。
たかがピンク、されどピンク。
好きな女の影響でピンクを持つようになり、別れた今もなお、色を捨てられなくなったようで、物ではない色の存在感を知った。
「俺のピンク」を強要する男の発言に、ピンクの距離は遠ざかった
なんだか気の毒に思い、次に出会う女性のためにも少しずつピンクから離れたらどうかとわたしは言った。
すると、
「いや、次に付き合う人にはこのピンクを好きになってもらう。だって女性はピンクだいたい好きでしょ。彼氏がピンクのものお揃いにしようって言ったら嬉しくない?」
嬉しくない。
心でそう吐き捨てた。
女イコールピンクはまだ納得しても、俺のピンクを強要されても嬉しくないと思うからだ。元々好きな色がピンクの彼ならいいが、この男は違う。
昔の女のピンクを次の女に押し付ける、しかも女ならピンク好きだろ発言に、わたしのピンクへの心は日本からブラジルまでの距離ほど遠ざかった。
確かにピンクが好きな女性は多い。わたしもそうだ。男性でピンクが好きなのも良いことだと思う。
ただ、女性は無条件でピンク好きでもないし、ピンクにも種類があるし、理由によっては嫌いになる。
わたしもこの「前の女を引きずる未練ピンク男」の発言で、ピンクを好きな理由を改めて考えてみた。理由はなかった。なんとなくだった。
あれからビビットのきいたピンクを見ると、あの男を思い出すようになった。思い出すたびに少しの嫌悪と色の存在感の凄さに気付く。
ピンクとの距離感は人それぞれだ。ピンクに近づける出来事も有れば、一瞬で遠ざかる出来事も有る。
今日のピンクはどの辺か。