久しぶりに家電量販店に行ったら驚いた。最新のドラム式洗濯機は、洗剤の投入から乾燥まですべて自動でやってくれるのだ。

分別する、干す、畳む…幾つもの工程が積み重なっている洗濯が大嫌い

洗濯とひとことでいっても「洗濯物を分別する」「洗濯剤を入れる」「洗濯機を回す」「洗濯物を干す」「畳む」という幾つもの工程が積み重なっている。それら一つひとつの「面倒くさい」が積み重なって、モノグサな私は洗濯が大嫌いだ。

洗濯物の分別はしない、洗濯剤も適当にドボドボ……というところまではできるけど、「洗濯物を干す」という工程はどうしても億劫で、週に1回も洗濯機を回さない。
風呂上がりにパンツのストックがなくなったことに気付き、そこから数日は勝負用のワコールのレースのパンツをタンスの奥から引っ張ってやり過ごし、やっと洗濯機を回す。一人暮らしの量と思えないほど溜まった衣類を、ドーベルマンが1匹入りそうな大きさのIKEAバッグに入れて、コインランドリーの巨大な乾燥機にかける。

空からは燦々とお日様が照っているのに、私はコインランドリーで400円を毎度払っている上に、重い荷物を背負って往復10分の道を歩いている。それが、20万円を超えるドラム式洗濯機を購入すれば、いつでも家で簡単にボタンひとつでふかふかの衣類を着る(こと)ができるのだ。

できればすべてを家電に任せたい。空いた時間はなにに使おうか

高い家電は裏切らないと経験したことがある。それは昨年、ホットクックを購入したときのことだ。
ホットクックとは、圧力鍋や蒸し器や保温調理器などの調理器具を全部合わせたようなキッチン用品だ。お値段は決して気軽に買えるものではなかった。なんとなく家電レンタルで試してみるだけのつもりだったが、使ってみたら思いのほか便利だったので、返却期限が来るまでは離れるのがつらく、やっとのことで購入したのだ。それでもなかなか手が出せないお値段だったので、結局メルカリで8割の値段で購入した。

今ではほぼ毎日使っていて満足している。料理の質は上がったし、自炊が増えて明らかに痩せた。野菜から出る汁気だけで料理する「無水カレー」はお店を超えるほど絶品だし、疲れた日は冷凍ミールをそのまま入れてボタンを押せば定食が食べられる。「家電はケチらない方がいい」という教訓を身に沁みるほど感じた。

できればすべてを家電に任せたい。
床はルンバに掃除してもらい、家に帰ると自動で電気がついて、アレクサに音楽をかけてもらい、疲れはラボットに癒してもらう。ホットクックとヘルシオで作った料理を食べて、食洗機で皿を洗い、ドラム式洗濯機で洗ったフカフカのタオルで風呂上がりの体を拭く。そしたら空いた時間はなにに使おうかーーと考えたけど、モノグサな私は「やりたくないこと」はたくさんあるけど「やりたいこと」はほとんどないことに気づいた。正直、睡眠時間に変えたい。ずっと寝ていたい。

コインランドリーの空気に包まれてで読書する時間も嫌いじゃない

高度経済成長期の主婦たちがこぞって月賦で「三種の神器」を買ったように、令和のOLたちも「幸福な生活」を演出するための道具立てとして家電を買うのはなんらおかしいことではないだろう。

でも、そもそもドラム式洗濯機が我が家に入るのか、サイズを調べるのも億劫だ。部屋に搬入してもらうように掃除をするのもできる気がしない。休日は寝ていたいので、業者の人が家に入ってくるのも嫌である。モノグサのレベルが高すぎる。先は長い。

実は、コインランドリーに充満したガスの匂いと柔軟剤の混ざった空気に包まれて、ギュインギュインという音を聴きながら読書する時間も嫌いじゃないのだ。まるでこの世界に私しかいないような気分になる。家でボタンひとつで解決する家電は便利だけど、そうしたら私はいよいよ部屋から出ない引きこもりになってしまいそうだ。だからしばらくはこのままの生活を続けようと思う。