私にとってピンク色は、運命の赤い糸よりも強いつながりをくれる色である。

小学校に入る前、ランドセルを買いに行ったときのこと。
当時はピンクやローズといった、赤以外の少し珍しい色がお店に並び始めた頃で、まだまだ赤色のランドセルが圧倒的に多かった。
珍しいもの好きの私は、周りと同じ赤色ではなくピンク色のランドセルに強く惹かれた。両親と一緒に売り場を歩いていると、あるランドセルが目に留まった。

パステルピンクというよりはショッキングピンクに近い鮮やかなピンク色、レースみたいに縁どられた刺繍、イチゴのワッペンやチャームが付いていて、中は花柄。細かいところまで乙女心をくすぐる可愛いデザインのランドセルだ。
どうしてもこれがいいと、散々駄々をこねた挙句やっと親が折れて、買ってもらったのを今でも覚えている。

お気に入りのピンク色のランドセル。全く同じものを教室で見つけた

そうして買ってもらったお気に入りのランドセルを背負って登校し、教室の自分の席に着いた私は驚いた。なんと斜め後ろの女の子の机にも、全く同じランドセルが置かれていた。その子も私のランドセルを見て目を見開いていた。

お互いに驚きつつも、思わず笑ってしまった。お揃いだね、と声をかけ、私たちは友達になった。私にとって、小学校で初めてできた友達だった。
席が近いこともあって何かと同じグループになることも多く、私たちは自然と仲良くなっていった。その後、小学校を卒業するまでクラス替えで離れることはあったが、放課後に遊んだり、一緒にミニバスケットボールチームに入ったりもした。
しかし、小学校を卒業すると同時に私が他県に引っ越して以来、そのまま疎遠になってしまった。

大学生になって、ふと訪れた小学校。6年前と変わらない姿だった

大学生になって、私は親元を離れて一人暮らしを始めた。大学生活も落ち着いてきた頃、ふと自分が通っていた小学校へ行ってみたくなった。
あんまりネイルはしないけれど、あの頃のランドセルみたいな鮮やかなピンク色を爪に塗って、ワクワクとドキドキを半分ずつくらい抱えて出かけた。
大きくなってもピンク色は変わらず好きだけれど、ランドセルから爪へと、身につける範囲はだんだん小さくなっていった。

小学校というのは、たいてい駅から遠いところにある。電車とバスを乗り継いで、やっとたどり着いた小学校は、6年前と変わらない姿でそこにあった。
休みの日で先生もほとんどいないと思われたので、中へは入らずに裏手の門の方から周りをぐるっと歩いてみた。思えば、小学生の頃は外から学校を眺めることなんてなかったので、不思議な感じだった。

同じランドセルを背負っていたあの子との、思いもよらない再会

体育館の近くを通りかかると、聞き覚えのある掛け声が聞こえてきた。
土曜日の昼下がり、そういえばミニバスケットボールチームの練習時間だったことを思い出した。まだチームが続いていることに安心しつつ、懐かしさに浸りながら歩いた。

そのまま歩いて正門の方へ出ると、私と同じくらいの背丈の人影があった。
休日出勤の先生かと思ったが、その横顔に見覚えがあった。向こうも私に気づき、目が合った。
同じランドセルを背負っていた、あの子だった。
あの頃二人が背負っていたランドセルの色みたいな、鮮やかなピンク色のラインが入ったジャージを着ていた。思いもよらない感動の再会だった。

青は藍より出でて藍より青しという言葉の文字通りの意味ではないけれど、私の好きなピンク色は運命の赤い糸よりも赤く強く、私とあの子をつないでいる。
二人で会うときのルールは、「どこかにピンク色のものを身につけること」。時間が経っても、ピンク色が好きという私たちの共通点は変わらない。