就活せずの春休み。暇を持て余して青春18きっぷで1人旅スタート

2022年3月、私は1人で仙台に行った。
今回の春休みはいつもと違う。まわりの友達は、就職活動で忙しそうにしているのだ。しかし、この4月で大学4年生になった私はろくに就活もせず、春休みに暇を持て余していた。
「これではいけない!」と思い、青春18きっぷでJR線を乗り継ぐことにした。
なぜ私が18きっぷを持っているのか。それは帰省した時の母の言葉がきっかけだった。
ぼやっとソファでだらけている私を見かねて、「せっかく時間があるなら青春18きっぷでも買って、ゆっくり観光しながら帰りなよ」と母親は言った。1回分は実家から帰る費用にしたので、まだ4回分が手元に残っていた。

目的地は宮城県の仙台駅に決めた。私はあまり東北を訪れたことがなかった。あまり深くは考えずに、名の知れた仙台にした。当日は早起きをして有人改札を利用し、青春18きっぷでの旅をスタートした。

電車に揺られながら、外を眺めたり、ネットサーフィンしたり…

電車は大都会・東京を一瞬で駆けぬける。
確かに東京は小さいが、その分見どころが凝縮され、首都の意地を見せつけている。東京に行くときは、疲れた時以外は座らずにドアの横に立つようにしている。電車からの美しい東京の姿を、ドアの大きな窓から見たいからだ。
大きい広告看板は私の好奇心をくすぐるし、有名企業の名を掲げたビルは私に少しだけ東京OLへの憧れを抱かせる。とにかく、東京は見ていて飽きが来ない。「次はどんな面白そうなものが出てくるんだろう?」と、つい窓にへばりついて街に見入ってしまう。

東京都から埼玉県への移行はスムーズに行われる。赤羽や川口は、まるで地域が変わったとは思わせないほどに都会であった(駅周辺以外のことは知らないが……)。

埼玉県を無事通過し、茨城県に入る。茨城あたりでは、車窓から人の姿をほとんど見ていない気がする。そのかわりに踏切が開くのを待つ、あまたの車たちがいた。茨城県は車社会らしい、という発見を得た。

その後もとにかくずっと電車に揺られていた。目的地にたどり着くまでは、睡眠かネットサーフィンかSNSを楽しむ。
脳が快楽に溺れているときは、時が進むのが速い。長い乗車時間もそれほど苦には感じなかった。

7時間も苦ではなかった旅路。ちょっとした発見に気分は高揚

目的地がだんだんと近づいてくる。仙台に近くなると、どんどん気持ちが高まってきた。
お気に入りの音楽を再生しながら、車窓から景色を眺める。見知らぬ土地を訪れるのは、いつだって楽しい。

仙台駅に到着すると夜だったので、牛タン弁当を買って今晩のホテルへと向かう。
電車での長旅をひとまず終え、ホテルにたどり着く。やっとひと段落。
もう座りすぎてお尻が痛いし、仙台駅周辺を歩き回ったので足も限界だった。だけど、私の精神はこれっぽっちも疲れていない。7時間も電車に揺られていたのに。

私の頭の中を駆け巡った思いは、
「やっぱり、旅をすることは楽しい」
ということだった。
旅行をすることで、今まで気にも留めていなかったことが私の中の大きな関心となる。
電車からの景色からその土地の事情を察することができる。「日本は小さいようで大きいな」とか「遠いようだけど近いなとか、いやそうじゃないかも」など意味のわからない発見もある。新しい土地の産物や名所にときめく。ちょっとした言葉のイントネーションの違いに気分が高揚する。
毎日同じことを繰り返す人生では、このような高揚感は得られないだろう。

私は「旅行をしながら仕事をする生活がほしい!」と強く思った。
私は自由に場所を移動して生きていたい。それがたとえ世間一般が抱く「社会人」ではないとしても。東京でOLになるというのも夢の1つの形だが、私はその夢を追わないだろう。
今の目標は、旅行をしながら稼ぐ手段を見つけることだ。