私は、ピンクを選ぶことに戸惑わない。インテリアや持ち物はもちろん、お洋服は自分に似合うピンクも分かってる。他の色と並んでいても、良いなと思えば迷わず手に取ることが出来る。
私にとって、ピンクを選ぶことは自然で、身近で、とっても大好きな色。

洋服にはいつも色を取り入れ、色合わせを楽しんでいる

そもそも、私はピンクに限らず他の色も大好き。お洋服にはいつも色を取り入れて、単色使いではなく色合わせも楽しむ。
レモンイエローとベージュのリバーシブルコート、マスタード色のトレンチコート。オレンジのスカートに、グリーンのスカートやバッグ。スカーフは様々な色を集めてる。
特にピンクは沢山持っていて、ベレー帽や刺繍のスカート、ニットのトップス。ランニングウェアやシューズもピンクだ。

その中でも、一番のお気に入りは、足首ほどの長さがある、装飾は何一つないピンクのコート。少し青みがかったマゼンタに近い、目が覚めるような濃いピンク。黒・グレー・白と並ぶピンクを見つけて、「これだ!」と迷わず選んだ。
このコートに、黒のニットワンピースとピンクとブルーのスカーフを巻いて、マーチンを合わせた。自分の容姿に自信はないけど、お店の店員のおばあちゃまに「もしかしてモデルさん?」と聞かれる程度には、そのピンクは私に似合っていたと思う。
冬のグレーがかった空と街中を歩く人のモノトーンファッションの中、私だけが白黒映画の中で色彩を持って生きているような気がした。「私、パリジェンヌみたい」と思うくらいに気分が良かった。

ピンクは日常には馴染まない色。着るタイミングを選んでいる

だから、ピンクは少しだけ私の中で特別。今日の私とっても最高!と思わせてくれる色。
だけど、いつどんな時も着られる訳じゃなくて、タイミングを選んでる。
友達と会う時に迷うことはない。待ち合わせ場所に現れた私に「素敵だね」と言ってくれるし、けらけら笑われてもネガティブな意味を感じたことは一度もない。カラーバリエーションの多い私のお洋服に対して、友達はピンクだからといって態度は変えないし、むしろ好意的で楽しそうにしてくれる。

その代わり、異性と会う時に選んだことはない。異性と出かける日に開催するデート服選手権で一度も勝ち上がったことはない。
なんとなく、このコートを着て会うことを避けている。別に嫌なことがあったわけでもないのに、“普通”な色や“無難”なデザインのものを選んでしまっている。

よくも悪くもピンクは日常には馴染まない。その色彩の鮮やかさは、日常から少しだけ浮いている。
一度だけ、会社に着て行ったことがある。普段は仕事用の紺色のコートだけど、どうしても夜におしゃれしたいイベントがあったから着て出社した。
その翌日、上司が「昨日すごい色のコート着てたね」と話しかけてきた。その言葉から揶揄いのようなニュアンスを、マイナスな意味を感じ取ってしまった私は、勝手に喧嘩を買った。「別に誰にどう思われてもいいです。私が好きで着てるだけなので」と。
「そうですね」とか「お気に入りなんです」と相槌を打っていたら、二言目にその言葉の真意をちゃんと聞くことが出来たかもしれない。どうして冷静でいられなかったんだろうって、今でも思い出す。

「私って最高!」。ピンクを纏えば、少しだけいつもの自分を超える

きっと、誰も何も思っていないのに。ピンクでも赤でも青でも、別に何色だって多分同じ。
私自身がピンクを特別扱いしてるからだ。それは、個性を演出できる気分の上がる色でもあり、私の考える“普通”から逸脱した“浮いた”色でもあると認識してるからだ。

大好きなピンク色を纏う時、ネガティブな気持ちを抱きたくないと思う。誰とでもどんな時でも、私が着たいと思うタイミングでいつだって着られるようになりたい。
でも、きっとこの先、他の色と同じような扱いにはならないだろう。結局は、この馴染まない主張の強さが好きなのだ。
日常に溶け込まない異質さがあるからこそ、私はピンクを纏うことで、少しだけいつもの自分を超えて「私って最高!」と思うのだ。