好きな色は何?子供の頃に比べてこの質問を受ける回数は格段に減った。色を聞いたところでどうなるのか分からないけれども今でもたまに遭遇する質問の一つである。
小さいころから、ピンクが好きだった。
いわゆる「女の子」が好きなものが大好きで、フリフリのお洋服がお気に入りで、プリンセスに憧れて、いつか自分にも王子様が現れると本気で思っていた。
それでも、小学生になると何となくピンクが好きなのはぶりっ子だって言われているような気がして、当たり障りないように答えていた。
4年生のとき、家族で田舎町に引っ越しをした。ここでの生活が驚きの連続だった。
第一に、出席番号は男女別。男女で遊ぶことはまずない。そして学校でスカートは履かない方がいい。
違和感がいっぱいだったけれど、その当時違和感の正体は分からなかったし、早くみんなと同じにならないといけないと思った。話すアクセントを直し、大好きなスカートは休みの日にしか履かなくなった。好きなこと、もの、色、なんでも周りと同じように、目立たないように小さなコミュニティに溶け込んだ。
「ピンクなんかやめておいたほうがいい」自転車屋さんの言葉に傷ついた
中学生になり、新しい自転車を買ってもらえることになった。選んだ色は「サーモンピンク」
小学生まではみんなカラフルな自転車を乗っているのに中学生になるとたいてい白か黒、シルバーになる。そういうものだと思っていた。けれど、2個上の姉は違い、一人だけ真っ黄色の自転車に乗っていて、駐輪場でも一番目立っていた。
周りに流されないで、自分を持っている姉がかっこよくて、両親にこのピンクがいいと伝え、自転車屋さんに行った。
「このピンクください」
そうすると自転車屋さんが
「ピンクになんかしたら後から恥ずかしくなるからやめておいた方がいい」
と何気なく言った。びっくりして、自分を何にも知らない人に否定されて、悲しかったのを10年経った今でも覚えている。
そんなことを言われたものだから迷ってしまった私に、両親は好きな色にしていいと背中を押してくれ、無事にサーモンピンクの自転車に決めた。中学時代はもちろん、高校、大学、そして今でもサーモンピンクの自転車を愛用し、一番の愛車である。
とは言っても、最初はサーモンピンクも妥協して選んだものだった
この時、真っピンクではなくサーモンピンクを選んだのは、何故なのか考えてみたことがある。当時は薄い色よりも濃い色が好きだったのに、あえて「サーモンピンク」を選んだ。その時の感情をはっきり覚えている訳じゃないけれど、きっと真っピンクを選ぶほどの勇気は無かったんだと思う。
けれでも、その妥協して選んだはずの色は、真っピンクでも真オレンジでもない、なんとも言えない色で気付いたら一番好きな色になっていた。なんとも言えないサーモンピンクは、白黒つけるのが苦手で、ふわふわ生きている自分にはぴったりなのかもしれないと気に入っているし、誰とも被らないのも凄く気に入っている。
大人の男性が青色を好きでも「男らしい」とは言われないのに
大人になった今でも、ピンクが好きというと「女の子らしい」と言われる事は日常茶飯事。もし、大人の男性が黒や青が好きだと言ったところで「男の子らしい」とコメントする人はまずいないだろう。なのに、どうしてピンクは「女の子らしさ」の象徴にされるのか全くもって訳が分からない。さらに、私が好きなのはピンクはピンクでもサーモンピンクなのに、なんだか全部をひとまとめにされているような感じも好きでない。
昔は周囲の反応が怖かったけれど、今は少し強くなった。「女の子らしい」と言われれば、「それは分かりませんが、好きなのでつい目についてしまうんです」と一言返せるようになった。
このコリ固められた社会を自分が変える力がない事もわかっているし、自分が頑固で少しめんどくさい人間なのも、自分のことだからわかっているつもりだ。それでも私は、誰かの「好き」、自分の「好き」を大切にできる世の中に1日も早くなってほしいと思う。