男兄弟に挟まれ、物心つく前からピンク色の持ちものが多かった

私は三人きょうだいの真ん中っ子である。それも、男兄弟に挟まれた唯一の女きょうだい。思えば、物心つく前から、ピンク色のものは全部自分に集中していた。
コップ、歯ブラシ、パジャマ、キティちゃんがプリントされた子供用の掛け布団、きょうだい三人へと贈っていただいたおそろいの布地のペンケース、キーホルダー、縄跳び、魚のぬいぐるみ。母がミシン縫いで作ってくれた巾着、手提げ、ランチョンマット。薄ピンク地にキティちゃんの柄が入っていた。幼稚園くらいまでは、お洋服もピンク色を好んで着ていた記憶も写真も残っている。

ところが小学校に入るころには、男兄弟の影響もあって、キティちゃんよりはポケモン、スカートよりはズボン。性格もちょっと男勝りになってきたようなところがあり、華奢で可愛い友達には似合うけれど私はそんなに可愛いわけでもないしと、なんだかいかにも可愛らしいピンク色は少し照れくさいような気持ちが芽生えていた。

いつしかピンクに苦手意識が。地味志向だった私に訪れた転機

一方でそんなことはつゆ知らず、遠方に住む親戚からは相変わらずピンク色のキティちゃんグッズをプレゼントされていて、ありがたい反面「どちらかというとピカチュウなんだけどなぁ……」と密かに思っていたことは、本当に墓場まで持っていくつもりでいる。

中〜高学年を過ごした小学校と、中学校は学校に制服があったので、私服は主に母に買い与えてもらったものやお下がりを着ていたが、思春期の女子とは思えないくらいの‪—―いや寧ろ思春期だからこそ、そっちに走ったのかもしれないが‪—―‬地味志向で、ピンクを筆頭に原色系の服なんてほとんど持っていなかったし、着ていなかった。
少しでも派手だったりガーリーだったりする服は、「私が着てても変じゃないかな」「こんな私がなんかすみません」みたいな気持ちで落ち着かなかったのをよく覚えている。

そんな地味志向、ピンク苦手意識女だった私に転機が訪れたのは、高校生の時である。
高校は制服がなく、各々の好きな格好(所謂「なんちゃって制服」や部活のジャージや普通の私服など)で登校していたのだが、ある冬の日、私は赤と紺のストライプのロングスカートと合わせるために「まぁ……今日はこれで良いか」とローズピンクのセーターを着て行った。

何げなく着たピンクのセーターを見た同級生の「可愛い」に衝撃

これは小学6年生の頃に某大型衣料品チェーン店でまとめ買いして以来時々着ていた、当時の自分はあまり積極的に着ていなかった「派手めの色の服」である。
他の服だと明らかに色が合わない気がしたから、暖かそうなセーターだったから、そんな到底積極的ではない理由で着て行った服だったが、クラスメイトのおしゃれ番長的な存在であった友達に「このセーター!すごく可愛いね!似合ってる!」とまさかのお褒めをいただいたのだ。

私は衝撃を受けた。
派手な服は避けて通ってきたけれど、これは私が着ててもおかしくないんだ、それどころか似合ってる……だと……?!この私に……?!

ピンク色の仲間には入れない、入れてもらえないような気がしていたけれど、私が一方的に距離を置きすぎていたことに気づかせてくれた彼女は恩人である。多分本人にとっては何気ない一言で、きっと覚えていないだろうけれど。

距離は変わるかもしれないけど、その時々の楽しみ方をしたい

おしゃれ番長のセンスはやはり本物で、そのセーターのようなローズピンクは私のパーソナルカラーに似合うものだということもその数年後に知るところとなったが、間違いなくあの一件からピンク色にグッとお近づきになれたと思うし、昔の自分なら間違いなく「派手すぎる」と尻込みしているであろう色使いのものを身につけることも、次第に大好きになった。

自動的にピンクのものは私にあてがわれることに、少々違和感があった時期も経験したが、ネットで「ダサピンク」の記事と出会ってそこはかとなく共感したこともあったが、やっぱり柔らかな桜色も、パキッとしたビビッドなピンクも、ダスティなくすみピンクも、今は胸を張ってどれも大好きだと思える清々しさ、楽しさを感じている。

程なくしてアラサーとなり、アラフォーとなり、と歳を重ねるにつれてまたピンクとの距離感は近づいたり遠ざかったりするだろうけれど、その時その時に好きなピンクを楽しめればいいなと思っている。