「珍しい!似合ってるじゃん」と友人は声をかけてくれた

私がピンク色の洋服を好んで着るようになったのは、つい2~3年の間である。きっかけは、母からプレゼントしてもらったピンク色の長袖のパーカーである。

洋服やオシャレをすることに興味がなく、自分自身では年に多くて2着購入しているが、母は「女子大学生はオシャレをするものだから」と言い、季節が変わるごとに1、2着プレゼントしてくれていた。
最初は、ピンク色の服が届いたときに母に「どうしてこんな派手なのにしたの。恥ずかしい」と電話越しで訴えたが、母は「あんたに似合うと思ったからよ、少しは明るい服を着て気分も明るくしなさい」とだけ言われた。

もらった洋服を一度も着ることなく処分してしまおうか、しかし、せっかく選んでくれたものだからと葛藤の末、大学に一度だけ着ていき、友人の反応を見て決めようと決心した。
普段はグレーや黒などと私なりに目立たない洋服ばかり着ていたため、違和感を抱きながら大学へ向かった。

寒い時期でもあり上着を羽織っていたため、まだピンク色のパーカーは見えない。講義が始まり、友人が見ていない隙にパーカーを脱いだ。普段着ないようなピンク色の服を着ている私を見て、「珍しい!似合ってるじゃん」と友人はすぐに声をかけてくれた。
その反応に喜びを隠せなかった。「それでこそあなたの良さがにじみ出ているよ」と褒めの言葉をもらったことをきっかけに、ピンク色の洋服を好んで着るようになった。
そこからピンク色は、人に変化を与えてくれる色だということを知った。

「普通」という言葉に締め付けられ、青色や緑色も好きだった

なぜこんなにピンク色に抵抗をしてしまうのかというと、幼い頃からピンク色が好きではなかったからだ。
誰が言っていた言葉か、誰からの教えか忘れてしまったが、知らないうちに私の脳裏には「普通、女の子はみんなピンク色が好きでしょう」という言葉が染みついており、その価値観に疑問を抱いていたからだ。「普通」という言葉に締め付けられ、私自身は、青色や緑色も好きであったが、それを否定されているように感じていたからだ。

赤いランドセルは女の子の色、黒いランドセルは男の子などと同様に、色でも男女の差別化を図っていたのかと、知らず知らずのうちに教育の中に埋め込まれていたのだろうと思う。
私はみんなと好きなものが被ること、人と同じでなければいけないことに違和感を抱いていたのだろう。人とは違う自分でありたかった。

自分の「好き」を受け入れてもいいのではと感じるように

最近では、ドラマやバラエティー番組に出演されている俳優さんやアイドル、芸人さんがピンク色のヘアスタイルをしていることに違和感を抱いていた。「男性がピンク色の髪色をしているのは男らしくない」などと勝手に決めつけをしていた。
過去の自分が疑問に思っていたように、「女の子は普通ピンク色を選ぶ」という言葉を、知らず知らずのうちに自分がされて嫌であったことを、他人へ価値観を押し付けていたのではないかと思われる。

今ではピンクが好きで、自分から好んでピンク色の洋服を手に取るようになった。
「女の子らしくありたいから」というわけではなく、私が過去に「ピンク色はみんなと一緒だし、ピンク色は私の好きな色を否定している」といった気持ちがあったが、私自身も考え方が変わり、自分の好きという感情を受け入れていってもいいのではないか、と感じるようになった。
「女性=ピンク色」で紐づけられる価値観は好きとは言えないが、ピンク色は変化を与えてくれる色であると思うし、過去に「女性=ピンク色」と紐づけた人は、女性はパッと花開いてほしいという願いを込めたのではないかと思われる。

ピンクとの距離感は、好きだと心の中ではわかっているけど他人にはバレたくはない秘めた恋のようであり、今では花開いた関係である。
初めてピンク色の洋服を身にまとった時の、自分の「好き」を忘れないようにしたい。