話題は、アプリにですらつぶやかないような内容。でも心地よかった

寝る前の習慣はありますか?
ストレッチをする、瞑想する、日記を書く、ASMRの動画を見る、漫画を読む。きっと人それぞれ寝る前に何かしらの習慣があるはず。そして、そのまま寝落ちすることが多いのでは?
私には、1年間だけ習慣化したものがある。それは、今から3年前の2019年のこと。当時19歳。
「23:00から眠くなるまで、彼氏と電話をする」ことだ。
呼吸をして酸素を吸ってエネルギーをつくるように、欠かせないものだった。

この電話はどちらか一方が眠くなるまでずっと、通話した状態を保つ。午前3時を回っていようが、眠くならないなら電話は切らない。基本、どちらかが寝落ちしたら電話は終了だ。
「起きてる?」に対して返事がないなら切る合図。たまに「ガーガー」といびきで合図してくれたこともある。

電話の内容は本当にたわいもないもの。もう世間話だ。近所の奥様方に溶け込めるくらいに。「今日ずっと雨だったね」「お昼はカレーだったよ」とつぶやき、アプリにですらつぶやかないような内容。だけどそれが心地よかった。

優しい彼は嫌がらず、眠くなったフリがうまくなった

おまけにこの電話は場所を問わない。
どちらかが旅行に行ってようが、親戚の家にいようが、そんなのお構いなしだ。
バイトで帰宅が遅くなって、23:00に電話が開始できない?
お風呂に入りながらでもできるじゃないか。
お互い学校で朝が早い?寝不足だっていいじゃないか。
ここまでくると、習慣というか、もう任務に近い。
寝る前に任務を果たさなければ睡眠は許されない。

しかし、こんな習慣が1年も続くと、いくら愛し合っていても限界がくるものだ。
彼はだんだんと「眠くなったフリ」が上手くなっていく。
女の勘とは鋭いものだ。言葉の言い回しや声のトーンで嘘を見破れる。
でも彼は優しい。決して「電話毎日するの嫌、めんどい」と電話の行為そのものを否定しない。
今まで同様、しっかり23:00に鳴らして24:00前に「眠いから切るね」と言って電話を切る。
1年も習慣化したものをいきなりやめるというのは、なんとなく気が引ける。

やめることになったら、それはもう別れの合図だろう。お互い「電話は控えめにしようか」のフレーズが言い出せなかった。

寝る前に電話をしないと寝付けなくなってしまったのかもしれない

でも別れはいきなりくるものだ。
24:00になっても電話はかかってこない。
聞き慣れた着信音が鳴らない。携帯を握ったまま朝を迎えると、彼氏からメッセージが届いていた。「彼氏と彼女の関係に疲れちゃったから別れたい」と。
察してはいたものの、いざ別れ話をされるとショックで、精神的にダメージを受ける。
でも、今思えばなんと耐え難い習慣なんだ。我ながら呆れる。ある程度、恋愛を経験してわかったが、これは依存に近いのでは。

3年経った今も23:00を回ると少しドキッとしてしまう。電話がかかってくるのではと。
寝る前に電話をしないと寝付けなくなってしまったのだろう。

私は飽き性だ。意識的に習慣化するのは苦手。だから、私の習慣というものは、何気ない行動がいつの間にか体に染み付き、気づいたときにはもう依存していて断ち切れないパターンが多い。
電話がまさにそうだ。飽き性が1年も同じことを繰り返せるなんて、愛の力はすごい。

もちろん心身ともに良い習慣もあるが、私は23:00にカップラーメンを食べたり、23:00から部屋の電気を暗くして映画を見始めて夜ふかしをしたりと、体にいい習慣とは言えないものを続けている。
きっと私は「23:00」に依存している。
23:00の電話の習慣を、他の何かで埋めようとしている。
食べ物、運動、映画に読書。
いろいろ試したが、「電話越しの声」が1番寝付きがいいようだ。