先日、久しぶりにピンク色の服を買った。裾やワンポイントだけピンクという、さりげないものではない。淡いピンク一色のトレーナーを買ったのだ。
春がもうそこまで近づいているから買ったのではない。ちょっとでも可愛らしくなりたいから買ったのでもない。
では何故ピンクの服を買ったのか?
理由は至極単純だ。新しく出来た推しの担当カラーがピンクだったのだ。

推しの色を集めてしまう。彼女のピンク色は華やかで衝撃的だった

私は重度のオタクで、色んなジャンルに手を出している。アイドル、アニメ、俳優、はたまた特撮なんかも守備範囲だ。
色んなオタク活動をしている中でふと気づいたのは、集める色が偏ってきたこと。だんだん担当カラーが固定化してきたのだ。この現象について、同じオタク仲間には共感してもらえると信じている。

ちなみに私は寒色系担当を推すことが多い。すると必然的に集める色も寒色系に偏る。文房具といった小さなものから、バッグや服と身につけるものまで。
気に入ったモチーフがあるとつい集めてしまう経験は誰しもあるだろう。そんな感覚で、推しの色を集めてしまうのがオタクの心情だ。

そんな私が、 初めてピンクを推した。とある男女混合グループの女の子で、 私と同じオタク気質なところに惹かれた。
世間がようやく暖かくなり始めた頃に出会った彼女のピンク色は、ずいぶんと早く開花した桜のようだった。ベタな感想だが、実際それくらい華やかで衝撃的だったのだ。

小さい頃から水色が好き。ピンクにはほぼ無関心だった

私が小さい頃、女の子はピンクを好まず、水色を愛する風潮にあった。
当時放送していた女児向けアニメを題材にごっこ遊びをすると、みんな揃って水色や青をやりたがる。譲り合いの精神が欠けた奪い合いの末、同じキャラが2、3人になるなんてこともあった。

もちろん、私も水色が好きだった。もしかしたら周囲に同調していただけかもしれないが、それは幼い頃の私に聞かなければ真相はわからないままである。そして譲り合いの精神を学んだ大人になっても、何故か好きになる色は寒色系だった。

別にピンク色に抵抗があったわけではない。ただ、あまり触れて来なかったのは事実だ。むしろ水色こそイマドキの女の子らしい色であると言われた時代を生きてきた私にとって、どちらかといえば無関心に近い色だったのだ。

私は私を保ったままで、新しく彼女の色を好きになっただけ

そして大人になった今、初めて暖色を推し始めた頭の中は、面白いくらいにピンク一色。いつもどこかふわふわした気分で、さらに彼女を見ることでそのふわふわした心地は大きくなった。これが初めて浴びるピンクの力か、と可笑しくなってしまう。
ただそれは、ちょっとした視覚の変化で起こる一時的なものに過ぎなかった。まさに、春になって桜を見ると浮き足立つ人々と同じように。

寒色系から暖色系に乗り換えたことによって生活に異変が生じたかと言われれば、別にそんなことはない。ただ生活の中で目にする色が増えただけ。そこには女の子らしい水色も、見向きもしなかったピンクも関係ない。「彼女の色を新しく好きになった」だけなのだ。

◯◯らしい色、なんて野暮ったい考え方で生活が変わるなんて堪ったもんじゃない。私は私を保ったままで、あなたの色を推すだけだ。