職場に慣れたいと焦る気持ちはわたしから「キラキラたち」を遠ざけた

わたしは大学卒業後、憧れだった芸術職についた。
クリエイトの現場は厳しく一緒に仕事をする先輩方は皆淡々と、でも熱意を持って仕事をされていた。
その中で新卒のわたしはどうしたって素人感が漂うし、お前にはまだ無理と振られない仕事もあった。
だから意識して自分を律して生活するようにした。
早く溶け込まねばという焦りが一層わたしをかき立てたのだ。

それまで大事にしていた自分のキラキラした好きなものたちを投げ捨てて、ただただ仕事をこなした。それだけ魅力的な仕事だったからだ。
そうして長い時間一心不乱に走り続け、ふと気づくと、わたしの大好きなキラキラたちは遠くで埃をかぶっていた。
職場にすっかり溶け込んだ頃には何が好きだったのかぼんやりしてしまっていたのだ。
これじゃいかん!
急いで埃を払ってひっぱり出すと、入っているもの全てにわたしの心はときめいた。

そう、本当は可愛いものが好きだったんだよね。
職場への行き帰りの洋服だって、仕事中に使う小物だって本当は色とりどりの可愛いものが良かったんだよね。
けれど、その時のわたしは周りになめられたくなかった。どこか〈女性〉ってだけでなめられている気がしていたから。
それは力も経験も及ばないわたしなりの小さな抵抗だったんだ。

日々に癒しは必要と直感に従った行動を。ビニール袋には可愛いグッズ

そんな時にハマったのがポケットモンスター、通称ポケモン。
長時間の座り仕事で腰が悲鳴をあげてから、毎日お風呂に浸かるようになった。その間、何もしないと色々考えて疲れる性格のわたしは、
「リラックスしたい!何にも考えたくない!」
ということで、時間もちょうどいいアニメを見始めることにした。
そこまで執着せず、かつ音だけでも楽しめるものイコール一度見たアニメだ!となり、たまたま全シーズン放送していたポケモンを視聴することに。

決め手は直感だった。
しかしその直感が冴えていた。
見事にハマったのである。
話の大まかな流れは基本一緒だと思っていたけど、ところどころ違いがあり、キャラクターも皆個性を持ちながらも純粋な性格で見ていて気持ちがいい。
小さい頃にポケモンアニメを見て感じた優しい気持ちを思い出していた。

ある日仕事も大詰めに入った頃、心も身体もヘトヘトになってしまい気分転換に、と入った駅構内の雑貨屋でポケモングッズが売られていることに気づいた。文房具や小物に可愛いらしいイラストが施されていて鼻血が垂れるくらい可愛い。ものっすごく可愛い。もう、見ていて癒される……。

見ての通り、この時ポケモンはすでにわたしの癒しになっていたのだ。
「日々に癒しは必要だよね?」
だから直感に従った。
そうしたら少し軽くなった財布と、ポケモンたちの可愛いグッズが入ったビニール袋を持ってホームに立っていたのである。

買ってしまったなら……!と、翌日からそれらの小物を職場で使い始めた。
ポケモンボールペンでものを書き、ポケモンマスキングテープで掲示物を止め、ポケモン付箋を使って伝言をメモし、上司に渡し続けた。
これまで没個性を重んじてきたわたしにとって、それは大きな一歩であった。

ポケモンに気づいた憧れの上司。「好きなの?」と聞かれた私は

使ってから2、3日後、いつものように上司に付箋を渡すと、
「これって、ポケモン?」

ぎくっ!
上司は同性のクールな方。わたしの憧れでもある人なのだけど、いざ対面で話すと畏れが勝ち、緊張してしまう。これは何年たっても慣れない。
「はい…そうなんです」

「珍しいね。好きなの?」
なんて言おうか迷ったけど、
ポケモンが好きなわたしもわたしじゃんってひらめいてしまったもんだから、
「はい!大好きなんです」と目を見て答えた。
捨て身の覚悟だった。
すると、「いいね」と、ふんわり笑って上司はその場を後にした。
わたしは今でもこの時の全ての直感を信じてよかったと思っている。

こうした20代を送ったわたしがいうのもなんだけど、キラキラして見える大好きなものや気になっていることはいつだってその時の正解なんだよね。
それが今のあなたなんだよ。
恥ずかしいことも、誰に遠慮することもない。ときめいたものをぜひ素直に受け止めてあげてほしい。
だってあなたの人生、あなたが彩らないで誰が彩ってくれるの?

大好きなものが与えてくれるパワーは強い。自信を持って生きていこう

わたしは今H&MのポケモンコラボTを着て、街の喫茶店でこれを書いている。
こうして自分を貫くことでなめてくる人もいるかもしれない、笑う人もいるかもしれない。
でも、その人たちはあなたの人生に影を落とすほどの影響力は無いよ。
それよりも、大好きなものたちがあなたに与えるパワーの方がずっとずっと強い!!!!!
だから直感を信じて、一回吹っ切れて、「えいやっ」って壁をぶっ壊せば、それは自分が作ったハリボテの壁だって気づくはず。
どんなあなたでもいいねと言ってくれる人は必ずいる。

だからどんな自分でも今の自分に自信を持って!
あなたらしく生きようねー!
そんなあなたが好きなわたしより。