最近のマイブームは?と聞かれたら、私は迷わず「マーメイドスカート」と答える。

今現在の私の脳内のトレンドランキングは全てマーメイドスカート、もしくはマーメイドスカートの関連事項で埋め尽くされている。時間が出来たら、通販サイトやフリマアプリでマーメイドスカートを検索して探している。
それではどうしてマーメイドスカートに夢中になったのだろうか。

おシャレなレディの集団は、特殊な形のスカートを履いていた

きっかけは、大学時代。いつものお気に入りのお店でショッピングをしていたら、オシャレなレディの集団が現れた。髪型もメイクもバッチリキマっていたが、私が特に目を引いたのは彼女たちが履いている特殊な形のスカートである。
これまで見てきたロングスカートやマキシスカートとはまた違う。あのスカートは何だろう。
オシャレにそこまで詳しくなかった私は、それを「特殊な形のスカート」とだけ覚えておいた。時が経つにつれ記憶の彼方に飛ばされたと思っていたが、ふと「あれは何だったんだろう?」と思い、モヤモヤした。

再会は、通販サイトで服を探した時。サイトをひらいたら、そこには大量のあの名称不明のスカートが出てきた。どうやら、このスカートは今現在、大流行中らしい。
写真で見ても、その素敵な形と広がりは変わらなかった。そして、やっと名前を知ることが出来た。

概念に名前が付いた「マーメイドスカート」を購入した

マーメイドスカート。やっと頭の中の「レディが履くスカート」「不思議な形のスカート」の概念が名前を持って現れた。そして、その概念に名前がついた瞬間、「私も履いてみたい」、この思いが生まれてきた。
しかし、このスカートは髪の毛をバッチリ巻いた大人のレディが履くものだと思い込んでいた私は、腰が引けて断念した。しかし、諦めきれずに数年が経った。私は思い切ってマーメイドスカートとなるものを買ってみた。

いくら形が好きでも、いざ着てみればどうしても似合わない可能性があるため、はじめは背伸びせずプチプラのブランドで購入した。服屋さんを何件も回って見つけた商品だ。何着も試着して決めた商品だ。特別な思い入れがある。そして、プチプラと言えど、あの上品な形は再現出来ている。十分な満足感があった。

私は実際にこれを履き足元に広がる裾を見て、本当に人魚の尾ひれのようだと感動した。腰や太ももに引っ付くような感覚、そして足首には風が当たりスースーする。背中からおしりにかけてきゅっと締まった形のスカートのため、自然に姿勢が良くなった。
そしてマーメイドスカートを履いた姿を鏡に映してみた。体の線が綺麗に見える。何だか一人前のレディに仲間入りした気分だった。

マーメイドスカートを履きこなすために歩く練習を始めた

しかし、マーメイドスカートはレディになるための服ではなく、レディになるためのトレーニングスーツでもあった。
このスカートは足の可動域を狭くさせる。そのため、大股で歩いたり足を広げたりする行動が制限される。万が一そうしてしまった場合はマーメイドスカートの糸が解けたり布が破れたりして、スカートそのものがおじゃんになる。レディたるもの、スカートをいたわり、しずしずとしなやかに歩くのだ。

歩く練習をする中で、私は物語の人魚姫を思い出した。人魚姫も人魚の尾ひれから人間の足になり頑張って歩く場面があった。私はその真逆を行く逆人魚姫である。
足がだんだん疲れてきた。私は人魚姫歩きをマスターして人間界をやめて、海の世界に帰ってやる、そうでもしないと割に合わないと、やけくそになってしずしず歩きを繰り返した。軽やか華やかなレディではなくて、タフでちょっと凶暴な逆人魚姫である。

その後、数人の友達からマーメイドスカートについて褒められた。そして、プラスアルファで所作を褒められることが多くなった。マーメイドスカートを通した修行のおかげだろうか。
その時、私は友達にレディとして逆人魚姫を隠し通せたことにニヤリとして、ただ「ありがとう」とだけ答えていた。