私は、自分の決断に後悔したことはない。基本的に今までの人生で通ってきた道、経験してきたことすべてに意味があると思っているからだ。
むしろ、過去の自分の選択の一つ一つに感謝することが多い。私が人前でギターの弾き語りをしてまわる音楽活動をはじめたきっかけになった決断も、その一つである。
学校帰りに見つけた音楽ボランティアの募集に飛び込んだ
中学3年生になったばかりの春、学校帰りに最寄りの駅に貼ってあるポスターに目がとまった。
「音楽が好きな方、演奏してみませんか?」
それは、地域のイベントや施設などで音楽を演奏する市民ボランティアを、役所の観光課が募集しているものだった。
シンガーソングライターに憧れて、小学生から毎日のようにギターの弾き語りを練習しては、いつか人前で演奏してみたいと密かに思っていた私にとって、思ってもみない大チャンスだった。
子どもでも参加できるのだろうか?知っている人が誰もいないところで大丈夫だろうか?という不安がよぎらなくもなかったが、すぐに応募を決めた。
私は一度やると言い出したら聞かない性格で、それは大人になった今でも変わってないのだが、決めたことに対して良くも悪くもまっしぐらになるところがある。
誰かに決められたことに従って後悔することになっても、誰も責任なんてとってくれない。「自分の人生だから自分で決める」というのが小さい頃からモットーで、まわりからよく天邪鬼や頑固と言われていた。
両親を説得し、音楽ボランティアの一員に。14歳の私は最年少
決めたからには、まずは飛び込んでみようと、両親に相談する前にポスターに記載されていた観光課の電話番号に電話をかけた。
出てくれた観光課の職員の方にポスターを見たと伝え、子どもでも参加が可能かを尋ねると、未成年は保護者と一緒に登録する必要があるようだった。
その日の晩、両親に事情を話して説得した。両親は一度決めたら聞かない私の性格をよく理解しており、後日一緒に役所まで行ってくれた。必要書類に記入し、はれて私は音楽ボランティアの一員となった。
14歳の私は最年少だった。
それからほどなくして、お祭りのライブステージ参加募集の連絡が来た。ついに、人前で歌う機会がきたのだ。
出演者に与えられた持ち時間は25分、MCを入れても4曲歌う必要があるので、急いで曲作りに取り組んだ。
迎えた初ステージの日、トップバッターとしてステージに立った私は、緊張しながらも心のままに歌った。祭りに参加していた若いお兄さんたちが盛り上げてくれたおかげで、途中から緊張も忘れ、楽しんでいるうちにあっという間に出番が終わった。
初めて立ったステージで踏み出した、音楽活動の第一歩
自分が好きな「歌」を披露して、場が楽しくなる。こんなにしあわせなことはないと心から思い、その日から次々と曲を書いたり、イベントやライブハウスに出演したりするようになった。
そして、音楽活動を続けているうちにたくさんの人に出会い、様々な場所に足を運んだ。歌が思うように歌えなくて、落ち込んだ日もあった。ただ学校生活を送っていただけではできなかった経験を得ることができたと思う。
14歳のあの日、思い切って役所に電話していなかったら、演奏の機会を得ることもなければ、大人になった今でも続けるほど音楽活動をやっていなかったかもしれない。やってなかったら今の人脈も、価値観もなかったかもしれない。
そう思うと、まだまだ幼かったあの日の私に感謝せずにはいられない。