睡眠時間を確保すると、一日の自由時間は数時間しかなくなる

成人の平均睡眠時間は7時間くらいだという。
そうなると、起きている時間は約17時間だ。平日の労働時間を8時間だとすると、自由に使える時間は9時間ほどになる。
さらに通勤時間や、食事などの生理的欲求を満たす時間も削ると……。本当に自由に使える時間は数時間しかない。

私の平均睡眠時間は、だいたい8時間くらいだ。労働時間を削ると、平日の残り時間は8時間となり、世間の人より自由時間が1時間短くなる。さらに私の場合、平日でも9時間寝る場合があるので、そういう時はまたまた1時間、自由時間が少なくなる。

さて、社会人になると、学生の時と比べて「義務ではないが、しなければならないこと」が意外にも増えてくる。なんだか表現が矛盾しているが、これ以外にどのように表現すればいいだろうか。
例えば、スキルアップ、昇給、転職のためにする資格勉強だ。別に強制ではないが、相手や自分がスキルアップや転職を望むならば、しなければならない。
資格勉強以外にも、仕事で知っていれば得する事項が出てきて、まとまった時間がないと調べにくい時には、夜の自由時間を使うこともある。仕事場のデスクを綺麗にするためのアイテムを探したり、自分で作ったりする。

趣味に没頭するために、睡眠時間を削ることにした

誰かに頼まれているわけでもなく、義務でもないのに、やらなければ自分の現状を変えることもできず、あるいは相手からかけられている淡い期待を裏切ることになる気がする。
そんなあいまいな「こと」を、「義務ではないが、しなければならないこと」と私は呼んでいる。このエッセイを読んでくださっている皆さんにも、心当たりはないだろうか。

夜の自由時間を使って、仕事が終わった後にも、このような仕事の延長のようなことをやらなければならない。仕事ばかりではストレスが溜まる。
自分の好きなことをやりたくなってくる。休日までこのストレスを持ち越したくない(休日前に爆発しそうだ)。
しかし時間がない。自分のやりたいことにはいつ取り組めばいい?
このようにむしゃくしゃする気分を自覚するようになったのは、社会人になって半年が過ぎていた頃だった。仕事に慣れ、ある程度周囲に目を向ける余裕ができる時期である。私生活に目を向けてみると、案外自分のために割く時間がないことに気付き、イライラし始めていた時だった。

というわけで、趣味の時間を渇望した私は、睡眠時間を削って、平日休日問わず趣味の世界に没頭することにした。深夜2時くらいまで、映画やYouTubeを観て、本や漫画を読み倒すなど、ほぼ毎日「宴」状態を作った。

睡眠時間を減らすとパフォーマンスが低下。不規則な生活はよくない

8時間睡眠をしていた私にとっては、尋常ではない生活だった。この時の睡眠時間は4、5時間程度だったと思う。睡眠時間と引き換えに、前々から気になっていた小説や漫画を消化でき、数年前に賞を取って注目作だった映画も鑑賞できた。たいてい流行に乗り遅れている私が、少しずつ流行の波に乗れているという充実感も得られた。

しかし、ストレス解消とささやかな充実感を得た代償は大きかった。当たり前だが、睡眠時間が大幅に削られたので、日中のパフォーマンスは低下する一方だった。出退勤の電車では、手すりにつかまって立ち寝をするのが当たり前になっていて、昼休みの時もこっくりこっくり、頭が赤べこ状態だった。
案の定と言うべきか、ひどいめまいを発症して寝込んだことを契機に、2か月も続かなかった夜更かし生活は幕を閉じた。

これに懲りて、現在では日付が変わる前に就寝する生活に戻った。
趣味の時間は減った。しかし、もう夜更かしはたくさんだ。あの、世界が洗濯機にぶちこまれて回されているようなめまいは体験したくない。夜更かし生活が直接の原因、とは限らないが、夜更かしをしていて日々疲れがたまっているという自覚はあった。日中のパフォーマンスも確実に悪かった。やはり不規則な生活は身体に良くない。なにより、この2月(未満ではあるが)間はトラウマを植え付けた。
趣味より健康だ。健康でなければ、趣味を楽しむことができないのだから。
それに、電気代も馬鹿にならない。