今年、私は社会人になった。いくつもの不安が頭の中を駆け巡っていたが、そのうちの一つが、生理中に体調不良になっても働けるのかという不安だった。

その不安は現実になった。入社した月の生理1日目と2日目はバッチリ平日にかぶってしまい、私は仕事中に体のだるさ、頭痛、眠気、そしてひどい腹痛に襲われた。周りにいた同僚たちに、「今日私は生理なので話は頭に入りません」なんて言えるわけがない……。ポーチを持って何度もトイレに行く姿を見て、察してもらいたいなぁとぼんやり考えながら、薬を飲んで何とかその日はやり過ごした。

体調不良を伝えると、やる気がないアピールに替わってしまうことがある

そして、純粋な疑問が湧いた。生理に関わらず、会社では基本的に体調不良アピールは悪とされているのはなぜだろう。

なぜか考えてみた。体調不良になったところで、出社できるレベルなら仕事をこなさなければならないという事実は変わらないので、体調不良を知らせない方が周りの人が気を遣われなくて済むからだろう。

もう一つある気がする。私たちの部署の上司は優しいので、嫌味なしに「なんか疲れてそうだね」と声をかけてくれる。すると、私たち新入社員は一斉に首を振り、「いいえ!疲れてません!」「集中してて顔が険しかったんですかね?笑」という具合に必死で疲れを隠そうとする。

もしここで「はい、正直疲れていて15分仮眠とりたいですね」なんて言ってみようものなら、こいつはやる気なさそうだし常識ないな……と思われてしまう。

そう、意図せず体調がすぐれない状態になっても、それを周りに伝えるとやる気がないアピールにすり替わってしまうことがある。自分から望んで体調不良になる人なんていないとわかっていても、体調不良宣言をすることは「その日仕事をやりたくありません宣言」にもなってしまうから。

生理のように毎月、それも数日間続く体調不良を毎回知らせていたら、私に大事な仕事は任せない方がいいと判断されてしまうかもしれない。本当に体調不良が受け入れられるのは、徹夜して仕事に身を捧げた時くらいだろう。

体調が優れない時は周りに知らせて、カバーし合えばいいじゃないか!

そもそも、一般的な会社員が1年間休まず健康に、ベストなパフォーマンスを仕事で発揮する前提で労働時間を決めるなら、1日8時間会社にいるのは多すぎると感じる。退勤後に自炊して運動して、趣味も少し楽しんで、そんな1日に納得して精神的にも健康な状態で、十分な睡眠をとれている人ってほとんどいないんじゃないだろうか。

労働時間が長いという、地球上で何百億人が嘆いたかわからない大問題を抱えてなんとか回っている社会人の世界に加わった私は、体調不良宣言の権利を世界に要求する。労働時間がすぐに5時間に縮まるなんてことはそうそう起こらないだろうから、だったらこの社会に必死で適応している者の権利として、お互い体調が優れない時は周りに知らせて、カバーし合うことぐらいしたっていいじゃないか。

ハリウッド映画のようなスケールにまで発展した要求だが、話を生理で苦しむ22歳の新入社員に戻す。仕事への意欲と関わらずに、「今日は生理なので通常のパフォーマンスはできません」と周りに伝えてもいいじゃないか、堂々と体調不良宣言をさせてくれ、と私は思う。

夜中までドラマを観て睡眠不足とか、前日にお酒を飲みすぎたとか、そういった自分である程度回避できる体調不良と違って、生理は月1回、約10~50歳の女性の体に必ずやってくるものだ。

私は実際、一緒に作業をしていた同僚が「生理でしんどい」とそっと伝えてくれたとき、薬を貸してあげられたし、彼女のペースで会話しようと心がけることができた。もし伝えられていなかったら薬を貸すことはなく、彼女は何時間も腹痛に苦しめられていただろうし、精神的にも疲労していたと思う。

「今日は体調不良です」と気軽に言える社会になってほしい!

考えてみれば私の場合は、生理の数日前から心が落ち込んで悲観的になりイライラする。生理中はだるくて眠くって、腹痛はかなりの激痛だ。生理後は体調が安定しなくて頭痛が続く。1か月の内、元気な時の方が少ないんじゃないかというほどだ。

これを誰にも知らせずに一人で耐えるなんて嫌だ! 周りの人に理解してほしいって思うのは甘えなの? いいえ、理解を得る権利があると思わない?

もちろん、50代男性の部長に「私は今朝から生理で大出血中です、来週までずっと体調優れません」なんて現代社会では、かなり言いづらいだろう。だから性別にかかわらず、「今日は体調不良です」と一言相手に気軽に言える社会になってほしいし、本当なら気軽に会社を休めるようになってほしい。

「授業中気分が悪くなったら、すぐに手を挙げてくださいね~」と学校で先生が呼びかけるシーンを経験した人は多いだろう。そう、人は急に体調が悪くなるものだし、それが学生時代までは許されていた。体を壊してまで学ぶべきものはないし、こなすべき仕事も本当はない。

ひとりひとりが自分にできる仕事を継続して、その連鎖で世界は成り立っている。バタバタと社員に休まれては仕事にならない、それが社会だ。そして、人は時に生理で動けないほどの腹痛に苛まれるし、どんなに注意しても風邪をひいてしまう。それが社会を構成する人間というものだ。

後者の事実から目をそらし続ける限り、女性の生理に対するプレッシャーは消えることはないし、男性も同じく体調より仕事を優先し続けるだろう。

だから、体調不良宣言を当然の権利として主張したいし、宣言を受け入れ周りの人がフォローすることも当たり前になってほしい。人間とはそういうものだって、人間の皆さんには受け入れてもらいたいな。受け入れるのと受け入れないの、どちらが幸せか考えてみてほしい。だってそうでもしないと、私は今月の生理も乗り切れない。