私の人生はゆずる方が圧倒的に多かった。
困っている人に席をゆずる。ラスト一冊の本を他の人にゆずる。友達の意見を優先する。
別に恩を売りたいというわけでもないし、ゆずることが趣味というわけでもない。自然とそうしてしまう。
自分が今までしてもらって嬉しかったことを他の人にもしてあげたいという気持ちが常に心の中にあるのだ。
もちろん、私もゆずってもらった経験がたくさんある。だからこそ、その分を他の人にお返ししたいと思う。

しかし、今までゆずってきた私でもゆずれなかったものがある。
それは「ありのままの自分」だ。

面接でどの企業にも「御社が一番」と言うことが最適なのか

それを実感したのは就職活動でのことだった。
私は書類選考が通り、面接の機会を得た。
今まで自分が大学でやってきたことや、それを踏まえた自己アピールを面接で話すことになる。
一足先に内定をもらった私の友達は、
「御社が一番ですって言ってね!これはどの企業にも言うんだよ!あと、入りたい理由をちゃんと答えれば面接はいける!」
と、私にアドバイスをくれた。
でも私にはこの言葉が腑に落ちなかった。

「御社が一番です」と、どの企業にもなりふり構わず言うのが最適なのか?
その企業が自分の第一志望じゃなくても?
自分の心に嘘をついてまで、企業が欲しがる言葉を言うことが最善なのか?

頭の中でぐるぐるぐるぐると自分の意見が渦巻いてしまった。
私は内々定を一つも持っていない状態で、その上、両親にも何かと心配されていた。
「内定もらえなかったらどうするんだ」
「どうやってこの社会で生きていくんだ」
なんてことも言われてしまう始末で、早く内定がほしいと心が急いでしまうこともあった。

でも、どうしても腑に落ちないのだ。あの友達の言葉が。
自分の中で対話した結果、一つの答えが浮かび上がった。

「私はありのままの自分を誰にもゆずりたくはない」という答えが。

私の気持ちは私だけのもの。何があろうと自分を通したい

企業面接では如何に自分をアピールできるか、企業に必要としてもらえる人材であるかを証明する必要がある。
そのため、不服ではあるが「御社が一番です」「私は御社でこのように活躍していきたいです」と自分の本心かどうかもわからない言葉を言う機会が多いように思う(私の勝手な想像だが……)。

でも断言しよう。
私はそんなのは嫌だ。
自分の考えを素直に言って何が悪い?
暴言や名誉毀損はしてはならない。
けれど、相手にごまをすったり、おだてたりするのはむしろ心の負担にもなるし、嘘がバレたときに痛い目を見るのは私達の方だ。
私はゆずるもんか。
私の気持ちは私だけのものだ。
相手の顔色をうかがいながら、重い空気で面接を受けるのは嫌だ。
そんな気持ちをするぐらいなら、ありのままの自分を隠すことなく見てもらったほうがいい。

こんな態度で面接をしていたら、就職活動に失敗するかもしれない。
だけど、私にもゆずれないものができた。
だから何があろうと、自分を突き通すつもりだ。

私は決して嘘をつかない。自分の考えを相手にゆずらない。
これらを突き通して、これからの面接に進んでいきたい。
それでもしも駄目だったとしても、その時はその時だ。
もし内定をもらえることができたなら、そのときはありがたく承諾しよう。