「素の新城(仮名)さんが見てみたい」
ある企業の人事の方と、20分程度の軽い面談をしたときに言われた。結局そういってくれた企業の方と直接お会いすることはなかったけれど、なんだか、変に張っていた肩の力が抜けていった感触を覚えた。

そこで私が披露したのは、作っておいた自己PR。友達に見てもらって、複数の大手企業の面接を突破した姉やキャリアカウンセラーに添削してもらい、何度も推敲を重ねたガクチカ。ワード画面を脳裏に映しながら、そこに書いてある文字を読んでいた、のだと思う。
でも、嘘は言っていない。きちんと自己分析をして、私の人生から出てきた言葉たちだった。……「就活」用に。

ウィッグの下はピンクのヘアカラー。受け入れてもらえる想像ができない

それを、見抜かれた。今ここの、その場の私の言葉ではないことを。
上辺で話していることを見抜く人事の方は他にも大勢いるだろうが、お互いに上辺で話しを進めてきた。だから、「素が見たい」だなんて、そんなことを言われたのは初めてで、うまく返せなかった。

ただ、素直に、口が「ありがとうございます」と動いていた。救われた気がした。髪色も茶髪でいいと言われた。ただ、それは、ごめんなさい。茶髪どころじゃない。黒髪ウィッグの下は、ブリーチ3回のピンクカラー。

同企業から、対面の企業説明会を案内された。でも、全部を受け入れてもらえる画が想像できなかった。
かといって、その人たちに嘘をつく……つまり、黒髪に見せかけて「これが本当の私です」と会いに行くことには嫌悪感を抱いて、その人たちには会いに行かなかった。ありのままを垣間見て欲しいと望む一方で、受け入れてもらうに足る説得力に自信がなかったのだ。
私は結局、別の、そこもまた、私の内面と真剣に向き合ってくれた企業からいただいた内定を承諾した。

私が受けていた業界は、急成長かつ人材不足が叫ばれている業界だった。
選んだ理由は、「ここならいても邪魔にならなさそうだと思った」から。同業界の、大企業と呼ばれる規模で、プライム上場(当時は東証一部)企業の内定を承諾してから丸5ヶ月経った今、私は内定辞退を決意した。

内定辞退の理由は、5ヶ月の間に「自分の欲」を素直に受け止めたから

この5ヶ月間に、いったい何があったのか。それは多分、「内から溢れる感情や欲求、直感から逃げない」という取り組み。それらを素直に受けとめ、その通りに動くこと。直感に身体を動かしてもらうこと。
4年生からサークルに入ったり、新しいアルバイトを始めたり、弾丸で一人旅をして現地で友達を作ったり、エッセイを書いてみたり。そういうことをしていたら、自分の欲が、素直に顔を出してくれるようになった。だから私は今、自分の、「これはやりたい!」「これはやりたくない!」という欲を聞いてやろうとしているのだ。

「素のあなたを知りたい」
これはどの企業の人事にとっても、心から思っていることだろう。偽って内定して入社しても、いずれ歪がでてくる。
でも、内定がもらえるかどうかというところが不安な学生にとって、「素を見せる」なんてことはそう簡単にはできない。企業が欲しがりそうな、マニュアル通りの、でもそこにちょびっとだけ個性を加えてアレンジした「就活生」という生き物を演じることになる。

誰もが恐れずにありのままを出せる社会をつくる努力がしたい

この状況をどうにかしたい。まだ一学生である私にできることは小規模だけれど、あなたの居場所を確保する努力はする。だから、恐れずに、ありのままのあなたで「就活」してみてもらえないだろうか。
あなたと企業、お互いに合うところがなかなかなかったら、話をしに来て欲しい。力になる努力をさせてください。

ありのままの私と仕事をしたくない人とは、きっとお互いに気持ちよく仕事をすることは出来ない。お金になる確証はないけれど、私には一緒に仕事をしたいと思えるような人がいるし、一緒に仕事をしたいと思ってくれている人もいる。
あなたにもきっといる。少なくとも、この記事に共感してくれるのなら、私はあなたと一緒に何かを生み出したい。

ありのままでいたら、自分にとって気持ちの良い人生が自然と形作られていくのではないかな。どうか、他の生き物を演じようとする前に、自分自身の叫びを解放してあげて。
あなたはありのままで美しい。ウィッグはもう捨てる。
You are beautiful in your way and were born that way.