「やる気は出るまで出すな」
どうしてもやる気が出ないとき、私が自分自身にいつも言い聞かせている言葉だ。

自分で言うのもなんだが、私はけっこう努力家だ。
中学・高校時代は大人に煽られずとも毎日きちんと勉強をしていたし、音楽大学受験を控えていた受験生の頃は、毎日休みなく練習していた。もちろん音大に入学してからも、よほどの体調不良でもない限り、練習を欠かしたことはなかった。
社会人になったあとも、オンラインのセミナーに参加してみたり、様々なスキルを独学で学んだりと、我ながらなかなか頑張っていると思う。

私にとって頑張ることはそれほど苦ではない。なにかを毎日コツコツと継続することも出来るし、自分で「やる」と決めたことはやり通せるタイプだ。
頑張った分をちゃんと結果に反映出来ているか問われると、そこはなんとも答えにくいところだが……。

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「いつも頑張っててすごいね」
「なんでそんなに頑張れるの?」
今まで、何度そう言われただろう。
頑張ることは出来ても、それ以外に秀でたものがない私にとって、頑張ることは唯一の取り柄であり、もはや義務である。私から努力を取ったら、なにも残らないのだから。やる気があるとかないとかの問題ではない。

だが、そんな私にも、どうしても頑張れない時がある。
操り人形の糸がプツンと切れたかのように、なにも出来ない、やりたくないと感じる時が、定期的に訪れる。
今までのパワフルさが嘘みたいに、廃人のようになってしまうのだ。
原因はなんとなく分かっている。
単純に、キャパオーバーだ。
毎日、努力!努力!努力!で進み続け、どこかのタイミングで心がポキッと折れてしまうのだろう。
そんなとき、私は自分自身にいつも言い聞かせる。「やる気は出るまで出すな」と。

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大学時代、友人がカラオケでたまに歌っていた曲がある。
曲名も、メロディも、歌手の名前もなにも思い出せないけれど、歌詞の一部分だけを鮮明に覚えている。
「元気は出るまで出すな」
すごくいい歌詞だと思った。
友人が落ち込んでいるときや、自分が凹んでいるときに、「元気出して!」という言葉を掛けたり掛けられた経験は、誰しもあるだろう。
でも、元気って出そうと思って出るものじゃない。
絶望の最中、「元気出して!」と言われたって、「出せるものなら出してるよ!」と思ってしまうだろう。

やる気も同じだ。
一度ガソリンが切れて、燃え尽きてしまったやる気は、そう簡単には戻らない。
エネルギーが溜まって、またフツフツと湧き上がるときを待ってやらねばならない。

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人間とは不思議なもので、ずっと頑張ることも出来ないけれど、ずっとダラダラと過ごすことも出来ない生きものだと思う。
これには賛否両論あるだろうが、少なくとも私はそうだ。
「なにもしなくないな」と全て放り投げてみても、本当になにもせずに過ごしていると、数日経てばなにもしていないことに罪悪感を感じ始める。
そして、自然と「そろそろ頑張るかぁ」という気持ちになれるのだ。

必死に自分をなだめなくても、いつかやる気は勝手に戻ってくる。
本当に頑張れないときは、無理に頑張る必要なんかない。
「やる気が出ない」というのは、これから更に頑張るための英気を養っている休養期間なのだから。

やる気は出るまで出すな。
気持ちが戻ってくるまで、じっくりじっくり待てばいい。
これが私流のやる気の出し方だ。