わたしは会社で毎日、コーヒーを出している。いわゆる、「お茶だし」だ(今は令和の時代だというのになんとも昭和的かと思われるだろう。しかし、うちの会社は昭和なのだ)。
毎日のルーティーン。コーヒーを淹れて、相手に出す。
何気ないことだが、おいしくなるようにと少しは気持ちを込めて出す。
飲んでいる人たちは、私の念?に気づいてくれているのかは疑問だ。

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しかしある日、いつものように私がコーヒーメーカーでコーヒーをコポコポ淹れていたら、上司がやってきて、インスタントのコーヒーを自分で作り始めた。
一口飲んでから、う~んと小声で唸ったあと、やっぱり違うんだよなぁと呟く。
家で飲むのと会社で飲むのと、味が全然違うらしい。そりゃあ、インスタントコーヒーと会社で淹れる豆のコーヒーは違うだろう。

けど、その上司は自宅にて会社と全く同じ豆を使って、コーヒーメーカーで淹れたという。しかし、会社の方がおいしい。なんでだろう?と口にしたとき、近くにいた先輩は「(私の名前)さんが淹れてるから、ですって~!」と言ってくれた。
上司は「そうか~、そういうことかぁ」と、いっつも愛情を込めてくれてるからだなぁと、冗談混じりに話していた。

いい職場だなぁ、とほっこりしつつ、私の毎日の念は伝わっていたんだなぁと思い、けっこう、うれしかった。

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「お茶だし」を今現在している会社は、日本で一体何社くらいあるんだろう、とふと疑問に思った。
男女平等が謳われ、会社での男女の在り方も大幅に変わりつつある現代だが、「お茶だし」自体が古い考えだからしなくていい!とは言われたくない。

私は、誰かにやらされてしてるわけじゃないし、相手に出したいから、お茶やコーヒーを振る舞ってるんだし、やりたくなかったらするわけがない。
私は就活で、「お茶だし」をするOLがけっこう憧れだったのだ。それで定時には帰ってドラマ見て、寝る。それが私にとって理想の社会人生活。

ついでに、お昼寝とかの時間もあったらなお良いんですが、そんなのはダメでしょうか。なんか大人になってから、自由な部分とそうでないところが増えたなって思うのは私だけだろうか。
だって、学生の頃はみんな、居眠りとかしてたでしょ?でも会社ってしてる人いないし、学生の頃に許されてたことが、社会人は許されず、逆もまたしかり。なんだかなぁって思う。

話はそれたが、とにかく、なんでもかんでもひとくくりに、男女平等の時代にそぐわないから、既存の習慣をなくすのは、惜しくて悲しいかなと思う。
そして、なんだか今は活躍する女性がスポットライトを浴びすぎて、私みたいな、のんびりいこーや、極力エネルギーを使いたくないわ的なOLは時代錯誤的なのか?と少し不安を抱いてしまうので、世間の皆様、あんまり煽らないでください。

時代に合わせて変わらなければいけないのか、頭を悩ませてしまうこともしばしばで、でも、私みたいな人は少なくないんじゃないかなとも思う。
そういう人たちはなかなか発言しにくいと思うし(たぶん)、声が埋もれてるだけだと思うんだよなぁ。
省エネOLにも働きやすくて、意見が通る、風通しのいい、そんな時代がいつか来るのか。

そう思いつつ、私は明日もコーヒーを淹れるのだ。