ほこりをかぶった、推しのアクリルスタンド。
会社のひとにもらった、あまり好みでないお菓子。
アクセサリーが入ったままの箱、3つ。
まだ読んでない本、数冊。

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小さなテーブルいっぱいに広がる雑多なモノたちは、わたしの心を映す鏡のように思えた。

片づけなきゃねー、なんて日頃思いつつ、実際に行動するのは年に数回のレベルである。
片づけるとすっきりする。しかし、少したてばまた元通りになるのだ。モノがどんどん増えるから。

かわいいお菓子の缶を見つけると、つい買ってしまう。
リップクリームを、すぐ手にとれる場所においておきたい。
とっくに本棚に入りきらなくなった本たちの逃げ場は、ここしかない。
……こんな調子で、小さなテーブルは侵食されていく。

一瞬すっきりしても、どうせまた、もやもやするのだ。やる気が出ない。
そう思っていたが、ついに昨日、テーブルと向き合うことにした。スペースを作る必要ができたからだ。

面接に落ちた。正社員の求人だった。
面接を受けて、ブラック企業っぽいことに気づいた。選考が通ったらどうお断りしようか考えていたくらいだったのに、先方からはとくに求められていなかった。
ウケる。全然面白くないのにウケるとか言ってしまう。自分が大変滑稽に思える。

そもそも、これといったスキルも資格もない今年30のフリーター女を、誰がほしがるというのか。自覚していたつもりだったが、ちっともわかっちゃいなかった。気づくまでに3ヶ月もかかった。

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就活は一旦中断し、なにか資格を取ろうと考えた。
ちょうど興味のある分野の資格試験が1ヶ月後に控えており、ギリギリ申し込みができた。テキストも問題集も手に入れた。
働きながらの1ヶ月はあっというまだ。さほど難しくないらしいが、目的達成のためにもきっちり学ぶべきだろう。

どこで勉強をするか、という問題が生まれた。
家の小さなテーブルはモノで埋め尽くされていて、テキストを広げられない。
図書館など、自主学習できる場所を探してみたが、近所に全然ない。

お気に入りのカフェで勉強してみた。好きな雰囲気の場所だ。しかし、いつもは気にならないBGMが、やたらと張り切っているように感じた。要するに気が散った。
時間的にも金銭的にも、毎日通い詰めるわけにはいかない。

仕事の日は会社でもできるが、メインはどうしても自宅になる。
そんなわけで、テーブルを片づけて、せめてテキストとノートを並べられる環境を作ろうと決意したのだった。

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「ごちゃごちゃ」とか、「とっちらかってる」なんて表現が似合いそうなテーブル。
今の彼と付き合い始めたころは、ここで2人でごはんを食べていたっけ。

モノが積まれていく。使っていないモノは勇気を出して捨てた。不用品を寄付して海外支援ができるお店を最近知ったので、持ち込めそうなモノは仕分けした。
昔旅行したときに買った絵はがきが出てきた。また行きたいな。懐かしく感じながら、そっと箱にしまった。

ちょっとした大掃除に発展し、結局、小さなテーブルひとつに午前中いっぱいを費やすこととなった。時間はかかったが、キレイになった。これでテキストとノートと問題集を並べられる。

ここですぐに勉強に取り掛かればいいのに、休憩しようと横になるのがわたしの悪い癖。その後、数時間眠ってしまったのである。
わたしのやる気はマイペースなのだ。ちょっとずつ、モノよりも学びを積み重ねていこう。