入社当時からの悩みがある。直属の女上司の機嫌に左右されて、やる気がなくなることだ。
ご機嫌斜めな理由が、私を含む部下のミスや横柄な態度といった、直接的なものならまだ納得がいく。次は同じことを繰り返さないようにしよう、と教訓にできるからだ。だが、朝出社した時点で、既に怒っている場合もある。家庭内のトラブルか、業務が忙しいからか、理由は不明である。
また、女上司は典型的な「お腹が空くと機嫌が悪くなる」タイプだ。昼食休憩前後で、機嫌が大きく変動する日もある。
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機嫌が悪い日の、女上司の私への当たりは強い。口調がきついだけでなく、私が女上司の近くに居るだけで席を外したりする。
極め付けは「無視」である。無視が最も悲しい。仮に、パワーハラスメントで労働基準監督署に訴える場合も、録音データに無言は意味が無い。録画するしかなく、ハードルが高い。
また、女上司は他の女性社員と共に陰口を叩く。陰口の最中に本人が来たら、ピタッと話を止めて、何事もなかったかのように仕事に戻る。態度が中学生だ。女上司の機嫌に毎日一喜一憂し、ビクビクしながら我慢の日々を過ごしている。
部長に、女上司のことを相談した時期もあったが、「心を強く持ちなさい。積極的にコミュニケーションを取る努力をしなさい」と助言されただけだった。別日に「繊細な人が読むべき本」といった類のタイトルの本と、図書カードを部長から貰った。「私が繊細だからこんな状況に陥っている、と部長は言いたいのか。私の悩みはお金で解決されるのか」と思った。
役職者である上司が、思い悩んでいる部下に対して取る行動として、間違っている。部長自身、女上司より年齢も入社順も下なので、何も言うことはできないのだ。
涙しながら昼休みに部長に訴えても、何も動こうとしない。そんな部長を見て、「人を変えることはできないんだ。私が変わるしかない」と判断し、自分の受け皿を工夫する方向に切り替えた。
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ある日、私の言動が気に食わず、女上司がブチ切れた。私も上司の態度に我慢できず、事務所を飛び出して喫煙所近くで2時間泣き続けた。恐らく1時間弱で泣き止んだが、事務所内に帰ろうとしても、体が動かなかった。
結局、掃除のおばさんに見つかり、事務員の中で相談できる相手を連れて来てもらい、一緒に社内に戻った。社内に戻ると女性陣はザワついていた。「ワガママな奴が帰ってきた」「いつまで泣いているんだ」という白い目で見てくる人達が大半だった。
席に戻るとすぐに、長時間席を外したことを同じ部署の人に謝った。その日、「私の気持ち」を優先してこの会社にいることはできないと悟った。
その日以降、この会社で生き残るためには「私」を押し殺して「上司がどうしたら機嫌良く居てくれるか」を第一に考えて、業務に取り組むようにした。女上司に話をしに行くだけでドキドキするので、緊張を和らげる効果のある薬をメンタルクリニックで処方して貰った。
必要性を感じた際に服用した。緊張の度合いによって、薬の量を調整した日もある。
こんな辛い決断をして努力してもなお、上司は部署内の女帝として君臨し続け、気分も相変わらずコロコロ変える。もう、疲れた。
人間関係が理由で退職したくはない。だが、いつ体と心の限界が来るか分からない。着実に心は折れ、壊れる寸前だ。私の心は、未だ上司の機嫌次第で揺り動かされている。
朝、会社に着いて女上司の車を見た時や、遠くから声が聞こえただけでも、もう何もやる気が出ない。「休憩中に同じ空間に居ても、気が休まらない」と判断し、1年前からは昼食を1人で食べるようにした。私の心のバランスを保つための行動だ。
今後も身を守るために自身に嘘をつき、表面上はチームワークを大切に業務を進めたい。