100%男性と同じようには働けない。これは男女差というより適材適所
知性と品にあふれる筆致でありながら、「ちんぽこ ぽこ美」というペンネーム! なぜこんな「ふざけた名前」(本人)を名乗るのか。その答えは「若い時はこんな下品なことを言っちゃいけない、こうあるべきだと自分を縛ってきた。でも、年齢や経験を重ね、やっとその呪いがとけてきた。ぽこ美を名乗れることが、私にとっての自由の象徴」と話します。この連載では、ぽこ美さんがこれまでにかけられた、社会や自身による呪いを振り返りながら、いかにしてぽこ美という名の自由を手にしたのかをお話していきます。「こうあるべき」に苦しむ方たちの呪いをとくヒントがあるはず!
男女雇用機会均等法が施行されたのは1986年だそうで、それ以来働く女性には男性と等しい雇用の機会及び待遇の確保が認められているということに「なっている」。
文字のとおり「なっている」だけで、実際には、しばしばそれが不完全で未完成なものであると感じている人は多いのではないだろうか。多いどころか、もうその状態が当たり前のことになってしまっているくらい染みついているという女性も多いだろう。
かくいう自分も社会人になって十何年目の人間でありながら「おぇ~、セクハラ~」とか「それ差別やでぇ~」と度々思うことがある。(関西弁はエセです)
社会人として会社の門戸を叩いた当時。2000年代にも関わらず、まだまだ会社というものは男性社会であり、特に男性の多い営業系に配属された結果、自分の社会人の幕開けはなかなか苦悩の連続であった。
私の社会人としての苦悩の歴史を披露します…
社会人1年目
男性の先輩に同行し、取引先の引継ぎにあたった。クライアントに挨拶をすると先方は挨拶もそこそこに言った。「次の担当がオンナノコなんかで大丈夫なの?」
(オンナノコでも問題なかったと認められるようにこれから頑張るぞ……)
社会人2年目
一部クライアントがストーカー化し、会社携帯が鳴りやまない。「彼氏はいるの?」「好きになりました」「今度食事行きましょう」「今日は帰るのが遅かったですね」……。連日業務とは関係ない連絡ばかりが届いた。
(上司に相談すると担当替えをしてくれたものの、あからさまに女性社員は“だから、めんどくさい”という対応であった。)
社会人3年目
会食に同席したら執拗にクライアントに体を触られた。
(耐えなければならないと思い、やんわり断りながら耐えた。同席した上司は見て見ぬふり)
社会人4年目
「二人で飲みに行ってくれたら契約するよ~」と持ち掛けられ渋々飲みに行った。
(契約してくれなかった。契約してくれたらね。と言えばよかった。クソ!)
社会人5年目
会食の帰りに「タクシーで送る」と言われ断ったものの無理やりクライアントに同乗される。車内で迫られる。
(「NO!嫌です!キモチワルイ!取引とかどうでもいいので二度と連絡してこないで!」と言えるようになった)
社会人6年目
その年の査定が高かったことに対して同僚男性より「クライアントと寝て仕事とってるんじゃないの?」と陰口を言われた。
(それが可能ならテメェも寝て査定上げて来いよ!)
社会人7年目
大した業績もなかったけれども、上司に取り入るのがうまい印象の同僚男性のグレードがガツンと上がって自分の上司格になった。
(社内営業ってやっぱり大事なのかな。あの人が評価される意味がわからん)
同僚男性と同じように、頑張ってきたつもりだった。のに
こうして社会人になって企業勤めをして、同僚男性と同じように、同じ仕事をこなせるように頑張ってきたつもりだった。業務内容も工数も男性と同じ時間を費やしたつもりだったし、同様にそれなりの結果も出してきた。棚卸で重い荷物を運ばなければいけない機会の際「重い荷物は運ばなくていいよ」と言われても「大丈夫です!私でも運べます!」と無理やり担いだし、夜間の作業が必要な時「今回は自宅待機していて」と言われても「大丈夫です!私もやります」と言って夜勤したし、嫌なクライアントとの会食も積極的に参加した。
それでも今回昇格したのは自分ではなかったし、重い荷物を運んだ代償にお気に入りのパンプスのヒールはぽきんと折れた。そういえば、スーツの股が裂けてしまったこともあったなぁ。
男性側も理不尽な言いがかりをつけられることがあると知った
“あの人より自分のほうが評価高いと思っていたんだけど”
気落ちしている自分を見かねたのか、親しくさせてもらっている先輩が飲みに誘ってくれた。
「まぁ、あいつはのし上がるためならなんだってする。上司のチンコも平気でしゃぶるような奴だからなぁ~、気落ちしないで次回はうんぬんかんぬん……」と先輩の慰めは延々と続くが内容がさっぱり頭に入ってこない。
ちょっと待って!今、“チンコをしゃぶるって言った!?!???????????
一緒に飲みに行ったこの先輩のことは好きである。尊敬もしている。そして自分自身確かに例の同僚男性のことはあまり良い印象はない。これからうまくやっていけるのかも不安だ。けれど、けれども!この発言はどうなの?頭の処理が追い付かなかった。先輩の話は続いていたが、話もそこそこに私は帰路についた。
人は無意識に自分と相手を比べて、どちらに優劣があるのか判断し、相手が優位にも関わらず具体的な理由が見つけられないとき、ひどい理由付けをしがちである。性的なことを引き合いに出して、ソレだから優位性があるのだと紐づけるのはあまりにも短絡的でバカバカしい。
自分が「寝て仕事をとっている」と陰で言われたことと同様に男性側も理不尽な言いがかりをつけられることがある。結局は陰口を言う側のレベルなんだな。と思い知らされた。
社会人8年目
結果上司になった同僚はメンバーを上手くマネジメントし、素晴らしい業績を導いた。彼はあるプロジェクトで私にも重要な役割を与え、そのポジションは自分でも知らなかった自分の良い点を伸ばすことに繋がった。(ちなみに例のチンコ先輩はこの年退社した)
現在
自分も年上の部下が増えた。きっと悪く思われていることもあるだろう。あのとき彼が上司になって良かったと思う。男性でも女性でも口汚く陰口を言う人は言うのだと知ることができたし、適材適所で、与えられた仕事をする意味を知った。
雇用の機会や待遇が男性と同じになったからと言って100%同じように男性と働くことは難しいこともあって先のように頼まれたところで女性は男性より重い荷物は運べない。(その女性にしかできない仕事ではないのならば)もうこれは男女差というより適材適所である。過去の自分はそれをわかっていなかった。
社会における男女差の溝はなかなか埋まらず同一ラインの平等ということは難しい。けれども少しずつ確実に世の中も自分も変わっていっている。もう不必要な夜勤も残業もしないし、会食に行くこともほとんどない。自分のできる範囲で仕事をこなし、毎年評価に繋げることにしている。
業務時間内めいっぱい仕事をこなせば必然と残業は減るし、求められていない夜勤を申し出れば返ってお荷物になってしまう。やってもやらなくても文句や悪口を言う人は言うし、無理に会食に同席したり、上司にゴマすりして評価ブーストをしてもそれは一過性のもので所詮自分の実力じゃない。自分自身、若いときは自信がなくてそういう仕事のやり方をしていた。けれど結局自分に評価がつくようになったのは、そういうものに頼らなくてもうまく立ち回れるのだと気付いてからだった。評価ブーストによる効果って即効性はあるかも知れないけれど所詮そんなものは長く続かないし、いつか化けの皮はハゲてしまう。どうせ評価されるなら自分の真の実力のほうが仕事は面白いし、長く続けられる。年を重ねても、なお会食だけで、ゴマすりだけで仕事が取れるわけないんだから。
この記事を書いた人
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ぽこ美
東京都出身。外資系企業勤務、プロ会社員を目指すバツイチ子持ち35歳。趣味は飲酒と相撲観戦。熱烈な豪栄道(現武隈親方)ファン。好きなものは酒とイケメンと北極ラーメン。
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この連載について
いかにして私はぽこ美になったのか
知性と品にあふれる筆致でありながら、「ちんぽこ ぽこ美」というペンネーム! なぜこんな「ふざけた名前」(本人)を名乗るのか。その答えは「若い時はこんな下品なことを言っちゃいけない、こうあるべきだと自分を縛ってきた。でも、年齢や経験を重ね、やっとその呪いがとけてきた。ぽこ美を名乗れることが、私にとっての自由の象徴」と話します。この連載では、ぽこ美さんがこれまでにかけられた、社会や自身による呪いを振り返りながら、いかにしてぽこ美という名の自由を手にしたのかをお話していきます。「こうあるべき」に苦しむ方たちの呪いをとくヒントがあるはず!
illustration :aketara shirome
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