「仕事、楽しい?」に「分かりません」と答えるしかなかった
「仕事、楽しい?」
入社1年目、業務が少し慣れた頃、会社の人からの問いだ。
質問して来た社員からすれば、良くある「仕事、慣れた?」と同じ感覚なのだろう。仕事に慣れたか慣れていないかに関しても「覚えることは山積みなのに現時点で慣れた」とは言い辛いので、「少しは慣れました」「まだ慣れていません」と言うのが精一杯だった。「仕事が楽しい」と思うことは、当時の私には困難なことだった。
数週間後、再び同じ人に「仕事、楽しい?」と聞かれた。1回目も2回目も、悩んだ末に「分かりません」と答えた。その返答を聞いた直属の上司に「仕事が楽しいかと聞いたら、楽しい、と答えるんやで」と注意された。
そういうものなのか、と心に留めた上で「では、◯◯係長は、仕事は楽しいですか?」と聞いてみた。答えは「分からない」であった。本音はどうあれ、建前上は「楽しい」と言うのが正解なのだと理解した。
後に、私に仕事が楽しいか、と聞いて来た社員に「仕事は楽しいですか」と質問した。
「楽しいよ」。質問した本人からの返答としては当然の返事だった。
入社後、3年程はコロナが流行する前であり、事務所の男性陣から頻繁に飲み会に誘われていた。飲み会の中心人物である部長は、いつも社員との「飲みニケーション」を楽しんでいた。と同時に、仕事の話にも花を咲かせることが多かった。私はこの部長にも質問した。
「部長、仕事は楽しいですか?」
「うん、楽しいよ」と笑顔で返された。部長は心から仕事を楽しんでやっているんだ、と尊敬と安堵感が込み上げてきた。会社としても、このような気持ちで20年間、仕事に取り組む社員がいることは心強いだろう。私もいつかこの境地に達する日は来るだろうか。
いつも前向きな同僚に相談。意外にも「仕事を変えても良い」と
入社6年目となり、職場や業務に嫌気がさしていた。モヤモヤが募っている時、他の営業所で営業マンとして活躍している方と、会社の電話で話す機会があった。私が職場への不満を持っていることを他の社員から聞いたらしく、様子見で連絡してくれたのだ。
この営業マンはいつも前向きで元気のある方で、私も声を聞いて元気を分けてもらいたいと思っていた所だった。その日のうちに連絡先を教えてもらい、後日相談に乗ってもらうことになった。
約1時間半の通話を通して沢山相談した。中でも印象に残っている言葉が「人生は、楽しまなあかんで。いつでも話は聞くし、やりたいことがあるなら仕事を変えても良いと思う。止めたりはしないかな」だ。
意外だった。年齢関係無く、誰とでも話すことができる方だからこそ、親身になってくれるとは思っていた。そして、仕事を辞めることを逃げだ、と言って引き留めるのかと勝手に想像していたが勘違いだった。
後輩の心に寄り添った助言ができる方と知り、より尊敬するようになった。仕事だけが人生ではなく、人生を楽しむために仕事を選択して業務に取り組む。社会人としての大切な心意気を学んだ。
前向きに努力する後輩を見て、背筋が伸びることも
私の職場の後輩には、前向きな気持ちで仕事に取り組み、資格取得に向けて努力する子がいる。夢に向かって努力する彼女の姿を見て眩しく感じることがある。
彼女も上司への不満などを持っているが、資格試験に何度落ちても挫けない。仕事を楽しいものにするために、苦しくてもひたすら頑張っている。
先輩としてもっとしっかり信念を持たなければ、と背筋が伸びる思いである。
約6年勤めている今の会社で「仕事を楽しい」と感じる場面は一度もない。滑り止めの就職先であり、夢や希望を捨てて、流れで現在の部署に所属し続けていることも影響している。
仕事は楽しいものだ、と思い込むことを幾度か試してみたが、出来なかった。私のマインドコントロール不足な部分もあるだろう。
ただ一つ幸いなことは、仕事を楽しみ、人生を楽しんでいる人が身近に存在することを知ったことだ。皆さん、仕事は楽しいですか?