シンクにたまる食器。たまる埃、たまる洗濯物。
ごみを出し忘れていて、外からゴミ収集車のメロディーが聞こえてきたとき、布団の中の私は絶望する。
◎ ◎
最近一人暮らしを始めた私は、恥ずかしながら仕事と家事の両立ができていない。平日はへとへとで部屋が荒れてしまっている。そして、土曜日は疲れて昼過ぎまで寝てるという有様だ。
ああ、こんなんじゃだめだと何度も思うのだが、私のやる気スイッチは行方不明である。
入居したては、そんなことはなかった。
なんとか掃除をして部屋を綺麗に整え、自炊も頑張ろうとしていたが。
「あんた、そろそろ疲れ出てきたんちゃう?」
一人暮らしをスタートして1ヶ月後にかかってきた母からの電話は、私の状況を完全に見透かしていた。
ああ、私は今までぬくぬくと実家で過ごしていたんだなと、親のありがたみを強く感じると同時に、なんて自分は不器用なんだろうと、何でこんなにできないんだろうと、ひどく落ち込んだ。
体力もなく、仕事でいっぱいいっぱいの私は平日、出勤して帰ってくるだけで疲弊していた。
夜遅く帰宅し、真夜中にたくさんの時間と材料をかけて作った料理が美味しくなかったとき、軽く泣きそうになった。ああ、全然うまくいかないし、疲れがたまる。一人暮らし疲れなんて、恥ずかしすぎると思いながら。
◎ ◎
ある日、「一人暮らしどんな感じ?」と職場の先輩が私に聞いてくれた。
「やばいです、崩壊しています。へ、部屋が荒れてて……。ご飯も作れてなくて……」
と答えると、
「そんなもんよ!この仕事、夜遅いし、料理なんて毎日作れないよ。冷凍食品とか外食とかしてる?」
と笑いながら教えてくれた。
冷静に考えたらその通りなのに、節約しなくちゃ、頑張らなくちゃ、お弁当作らなくちゃと、〜しなくちゃ!のオンパレードで、家に帰っても自分を追い詰めてしまっていた。
「せっかく、一人暮らししたんだから楽しまなくちゃ!近所とか散歩したら気になるお店とか出てきて楽しいよ」
とも言ってくれて、「はっ、そういえば、全然、一人暮らしエンジョイできてなかった!」と、私は我に帰ったのであった。
◎ ◎
話をよく聞いていくと、その先輩も土曜日は昼過ぎまで爆睡しているらしい。
私と同じではないか(笑)!
何でできないんだと自分を責めるのではなく、そんなに疲れているんだな、ゆっくり休もうと自分を労ってあげないといけないなと改めて感じた。
多少、ごみや洗濯物がたまっても死ぬわけじゃない。疲れが取れて、やる気が出たときに片付けたらいい。
不器用で恥ずかしい自分も、笑って受け止めてみよう。
こないだなんか、部屋を片付けているときにぶつかってTVを倒して、液晶が割れてしまった。
今度から、TV台の固定と、液晶保護パネルを必ずしようと心に刻み、次に生かすつもりだ。
下半分が真っ黒で、上半分の画面でなんとかTVを観ている状態である。意外と観れるもんだな。
ちょうど登場人物の顔が上半分に出てきてくれたとき、やった!こんにちは!と思わず挨拶をしたくなるほど嬉しいし、観えない下半分は、どんな映像が流れているんだろうと想像するのも面白い。
……とこんな感じで、しばらく不器用な私の一人暮らし生活は続きそうである。